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この本から学べるポイント
- 1:ファスト教養は小銭稼ぎのツールにしかならない?
- 2:教養が人をつくる
- 3:経済的な自由と精神的な自由はどちらが大事?
神奈川県にお住いのペンネームtetori9さん36歳男性(職業:その他)から2022年10月頃に読まれたファスト教養 10分で答えが欲しい人たちを読まれたレビューになります。
ファスト教養 10分で答えが欲しい人たちの内容
"最近、教養を手軽に要点だけ簡単に知りたいという需要が増えてきました。著者は、そのような点に着目し、それをファストフードになぞらえてファスト教養と名付け、それがはらむ問題や、我々はこの問題にどのように対処していくべきか、など、ファスト教養について様々な角度から検証を加えていく、というのがこの書籍の内容です。
ファスト教養は、肯定されるべきか、否定されるべきか、その良い所は?悪い所は?という具合に、ファスト教養周辺を取り巻く知識や意見を参考にしながら、時代の流れまで考察していくという、大きな範囲をカバーした本となっています。"
ファスト教養 10分で答えが欲しい人たちの著者について
著者:レジ―
"1981年生まれという比較的若い年代の著者であり、本名を使わないあたりは謎に包まれた人物です。一般企業でマーケティング戦略に関わるかたわら、ポップカルチャーについての論考をブログなどで発信している人物です。
実際には、そのような経歴からは想像できないほど、深い考察を繰り広げる人物であり、読んでいる本も専門的なものが多く、そのような所からは、著者の知性の高さをうかがい知る事ができます。"
ファスト教養 10分で答えが欲しい人たちのYoutube
「ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち」についてYouTube(ユーチューブ)で紹介している動画がないか調べてみました。
「都庁watchTV」チャンネルでファスト教養のことに関して考察がされているので良ければ合わせて見てみてください。
ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち本の要約
この本から学べるポイント
- 1:ファスト教養は小銭稼ぎのツールにしかならない?
- 2:教養が人をつくる
- 3:経済的な自由と精神的な自由はどちらが大事?
"誰もがインテリが交わす知的な会話にあこがれた事があると思います。では、そのような会話を交わすために何が必要かというと、知的な教養であり、つまり、古典や現状についての深い知識が求められるというのが実情です。しかし、多くの方は、そのような知識を得るための手段を持っておらず、忙しい毎日の中で、本を読む機会も限られており、教養を身につけるための時間がありません。
そこで、手軽に古典や有名書籍の要点だけをまとめ、10分から20分で概略を理解できてしまうという「ファスト教養」の需要が高まっていると著者は指摘。そのようなファスト教養崇拝に陥らないためにも、本を読む時は、自分の好きな本を読む、コスパ重視ではなく、使った時間が無駄になってもいいと思える教養を身につける、など、自分が好きだからその教養を身につける、というスタンスを取る事が教養を身につける上で求められる事である、という論旨が、大まかな流れです。"
ファスト教養は小銭稼ぎのツールにしかならない?
"著者は、まず、教養を身につける事で得られるものは何か、という事から考えていきます。ビジネスに役立てるため、なら、お金稼ぎが目的でしょうし、最近は、多くの方がこの目的のために教養を身につけようとしています。
しかし、著者の指摘として鋭いのは、結局のところ教養を身につけても「個人の小銭稼ぎのツールにしかならない」という指摘です。教養のある所を上手くアピールできたり、教養から上手いアイディアを提案する事ができても、ボーナスが少し増えて終わり、というのがせいぜいのところではないか。それなら、無理をしてまでも教養を身につけなくてもいいのでは?という疑問は、ある意味で的を得ています。
しかし、良いアイディアを出したい、昇進したい、皆の役に立ちたい、という思いは、決して貶められるべきものではなく、私個人としては、好きで身につけている教養が少しでも小銭稼ぎのツールになったのなら、それはお得で良いのではないか、と思いました。
また、著者自身も必ずしもファスト教養を否定しているわけではない所がポイントであり、面白い所だと思います。個人的には、のんびりと教養を身につけて、小銭稼ぎになったらそれはそれでいいじゃない、という位のスタンスが好きです。
このように、この本で展開されている著者の考えには学ぶべきものが多くありますし、私自身、ファスト教養の信奉者になっていたので、そのような部分は非常に勉強になりました。"
教養が人をつくる
"では、教養とは何のために身につけるのでしょうか。
著者によると、東京大学・国際基督教大学名誉教授の村上陽一郎さんは、「教養がある」ことを「慎みがある」事と定義し、「野放図な欲望の発揮を慎む(ことによって、理性が命ずる道徳律をも遵守しようとする)ための原動力として教養を考える事は、間違っていないと私は考えます」と述べています。
確かに、教養のある方は、人との接し方も変わっています。コミュニケーション術、社交術、自己啓発、仏教やヨガなど、心の扱い方を記した書物を読む事で、人として大成し、そこに慎みが生まれる、というのは、実際にある事だと思います。人間としての土台ができる、という事でしょうか。
例えば、フロイトは、精神分析の権威でありながら、人と接する時は聞き役に徹し、どこまでも穏やかな態度をもっていた、と言われていますし、西田幾多郎の「善の研究」を読んだ方は、知性に善を作用させることが本当の知的な振る舞いだ、という考えを知る事ができ、そのような所から、慎みのような精神は生まれてくるような気がします。
著者は、教養と似た思想である修養という科目も、努力して人格を向上・完成させる事を目指す学問であったと述べており、個人的にも、学問や教養が人をつくる事は確かにある、と思いました。"
経済的な自由と精神的な自由はどちらが大事?
"著者の自由についての考え方も卓越しており、なかなか面白い部分があります。
自由には、「精神的な自由」と「経済的な自由」があり、「経済的な自由」が極端に優先されるイメージは、かつての堀江貴文さんが露悪として見せたスタンスに近い、と指摘しています。
しかし、「経済的な自由」は自己責任で生き抜いてく必要のある時代には、重視されがちな思想であり、こういった状況において、「直接的にお金を生まないもの」の価値が低く見積もられるのは当然と言える、と述べられています。それはすなわち、「精神を豊かにする」といったあいまいな効用で語られがちなカルチャーの居場所がなくなっていく事を示唆している、と著者は言います。
個人的には、元々お金というものは、それによって一定水準の衣食住を確保した後には、増えればそれだけ精神を豊かにするもの、という性質をもっていると思います。
つまり、お金も「経済的な自由」という役割を担うと同時に、一定レベル以上においては「精神的な自由」をも担う存在であり、それは、カルチャーが「精神的な自由」を担うのと似たような作用を持っている、と思います。
お金は日常生活を送る上で何よりも大事ですが、お金のそのような側面を考えた時、「精神的な自由」をもたらす趣味や好きな事、恋人、家族といる時間といった部分も重視すると、精神的にも豊かな、より幸せな生活を送れるのではないか、と思いました。"
ファスト教養 10分で答えが欲しい人たちを読んでの感想やレビュー
"著者のファスト教養についての在り方についての見解には注目すべき点があります。
時の洗礼を受けて今も残る芸術家の作品を、ファスト教養という「ビジネスシーンで話を合わせるためのツール」に位置付けている時点で、これらの固有名詞は「小手先のスキル」に成り下がっている。そしてそういった振る舞いを「教養あるビジネスパーソン」像として評価するのがファスト教養全盛の現代の風景である。(P.46より引用)
著者はこのように述べているのですが、時の洗礼を受けて残る作品というものは、基本的にそれを読んだ時に、感動したり、心に残るものが多くあります。たとえ、動機が小手先のスキルであっても、読んだ時に実際に感動すれば、それはその人にとって本物の教養になるのであって、小手先のスキルに成り下がる事もあれば、活きる時もあるのではないか、と思いました。
著者は、この時の感動体験などを、能動的な「好き」という気持ちで表現しており、著者自身も有名な教養本は、自然と「好き」になるものが多いという旨の発言をしており、この知的好奇心による「好き」という態度が、ファスト教養という存在に対する一つの答えなのではないか、と著者は言っていますし、私もそのように思いました。"
「ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち」読了。面白かった。
でも要約して伝えられない低読解力なので、また読みます。この本はファストではなかったです。#ファスト教養 pic.twitter.com/0po7GCN4zW— たろいず@病気でもイケオジ目指して筋トレするひと (@Q_taro227) September 26, 2022
『ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち』読了。
最も深く印象に残ったのは映画『花束みたいな恋をした』をファスト教養視点で読み解く第五章。鑑賞から2年弱を経てなお、社会の波に飲み込まれた麦の文化的変容は忘れがたく、心に刺さったままになっていた棘を丁寧に抜いてもらった気分になった。 pic.twitter.com/NHRsRzE10m
— ねこ (@banksy_karakuri) October 2, 2022
ファスト教養 10分で答えが欲しい人たちがおすすめでない人
こんな人はおすすめしない
- 難しい本が苦手な方
- ファスト教養について、確固とした自身の考えを持っている方
- ファスト教養を全面的に肯定している方
- 教養について興味がない方
- ファスト教養が流行る最近の動向に興味がない方
"まず、本書は、レジ―さんというポップカルチャー関係の方が書かれている本ですが、内容は難解で、参考文献として掲載されている物も難しいものが多く、軽い気持ちで読もうとすると挫折すると思います。
また、最近流行りのファスト教養について、全面的に肯定しているわけではないため、ファスト教養が好きで、いつもファスト教養系の動画などを利用している方は、自分と異なる意見の数々に、がっかりするかもしれません。
しかし、ファスト教養に少しでも興味のある方は、その肯定派も否定派も、なにがしかの事を学べる達見がちりばめられていますので、どちらの方も、得られるものはあると思います。"
ファスト教養 10分で答えが欲しい人たちをおすすめしたい人
こんな人におすすめ
- 教養とは何か知りたい方
- ファスト教養は肯定されるべきか考えたい方
- ファスト教養は本当に効果的なのか知りたい方
- 著名人の教養に対する考え方を知りたい方
- これからの教養はどのような流れを辿るのか、知りたい方
"まず、この本では、教養とは何か、という定義から説明してくれているので、そのあたりを基礎から知りたい方にはうってつけではないか、と思いました。
例えば、教養の意義について、
何かの役に立つからでも、何らかの利益があるからでもなく、ただ純粋に、自らの存在の深さを耕すためにのみ学び続けるのです。
役に立つ、役に立たないに関係なく学びの楽しさを味わう。それが長い目で見て人生の豊かさにつながる。
と述べられており、これなどは、ファスト教養に対する否定的な回答としての役割も持っているのではないか、と思います。
著者自身は、ファスト教養を重視する流れはしばらく続くだろうとしつつ、本書の中で独自の教養論を展開しており、それも優れていてためになりました。
そのような部分が気になる方には、おすすめできる内容であると思います。"