ご紹介する本
生き物の死にざま
ジャンル: ノンフィクション, 科学
著者: 稲垣栄洋
出版社: 草思社
発売日: 2021/12/3
本の長さ: 248ページ
この本から学べるポイント
- 1:生き物とは、限られた命を必死に生きて死にゆく、儚きものであること。
- 2:周りの生き物にも、人で言う「人生」が存在するのだということ。
- 3:様々な生き物の死にざま、人からは想像もつかない特異な死にざまを知れたこと。
AAA
生き物の死にざまの著者について
著者:稲垣栄洋1986年静岡県産まれ。静岡大学大学院農学研究科教授。農学博士。専門は雑草生態学。岡山大学大学院農学研究科修了後、農林水産省に入省、静岡県農林技術研究所上席研究員などを経て、現職。
著書『スイカのタネはなぜ散らばっているのか』(草思社)他、多数。
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『生き物の死にざま』【この1冊】稲垣栄洋 草思社
生き物の死にざま本の要約
この本から学べるポイント
- 1:生き物とは、限られた命を必死に生きて死にゆく、儚きものであること。
- 2:周りの生き物にも、人で言う「人生」が存在するのだということ。
- 3:様々な生き物の死にざま、人からは想像もつかない特異な死にざまを知れたこと。
タイトルのとおり生き物の死にざまについて書かれています。多くは身近な生き物についてです。セミ、クモ、クラゲ、カゲロウ、他にもライオンや近年見つかった生き物ハダガデバネズミの死にざまも見所です。人は人以外の生き物にも「死」がおとずれることは知っていても、その死がいつ・どのようにおとずれるかは知らない場合が多いと思います。道端にセミがひっくり返って死んでいる姿を目にする方もいると思いますが、なぜひっくり返って死んでいる姿しか目にしないか考えさえ及ばないかもしれません。この本は、生き物の死にざまには必然的な理由が存在することと、それを知ることで生き物の生に壮大なストーリーが存在することを感じ取れる一冊となっています。死にざまを知ることで生きざままで知れる、感動の一冊です。
生き物とは、限られた命を必死に生きて死にゆく、儚きものであること。
人は人生100年の時代に突入したと言われる中、生き物の中にはたった一日しか生きられない極めて短命な物もいれば、不死身とも言える長い長い生を持つ物もいる。いずれの生き物にも共通するのは、新しい世代(新たな命の創造)を産む使命を持って産まれてくることだが、それを成すために課される死に至るまでのストーリーの重さが生き物目線で感じられる。にも関わらず、死は彼らを待ってはくれない。使命を果たせば、死のスイッチが押されカウントダウンが始まる。時には使命を果たさずとも不意な出来事から死がおとずれる。人には救急だの治療だの延命だの手を尽くす手段がある一方、生き物はただ自然の摂理に身を任せ、自身を滅ぼすことで新しい世代に次を任せていく。その姿がいかに儚く美しいものかと言うことをひしひしと学ばせてもらった。
周りの生き物にも、人で言う「人生」が存在するのだということ。
質問が14.と重複しているので「2つめについて」詳しく書き留めます。
人は周囲で生きる生き物を常に観察しているわけではない。セミが鳴き出せば「夏か」と季節を感じ、セミがひっくり返って死んでいれば「気持ち悪いな、そろそろ夏も終わりか」程度で終わっていくだろう。人にとってセミはセミでしかなく、セミが死ねば「死」という事実を理解するだけの場合が多いだろう。しかしこの本はセミが次の世代を産む使命を成し遂げた後、ひっくり返って死ぬまでの間に何が起きているかを教えてくれた。お陰で身近な生き物に、死ぬまで意味をもって生きていること、人で言えば人生のようなものが、生き物にも確実に存在していることを教えてくれ、命の尊さを学ばせてくれた。
様々な生き物の死にざま、人からは想像もつかない特異な死にざまを知れたこと。
質問が14.と重複しているので「3つめについて」詳しく書き留めます。
死にざまは生き物それぞれであることが詳しく書かれていたので、ある生き物はどう死にゆくのかを分かりやすく理解できました。本の中には血を吸うカについて書かれていました。そして殺される死にざまが書かれていました。人間はカが血を吸いに来れば容赦なく叩き潰し殺します。しかし、あのカは人で言えば妊娠した妊婦さんと同じです。子に栄養をあげるため優良なたんぱく源を人間の血に求めることにした妊婦のカは命がけで人間の生活に飛び込み血を吸います。吸いすぎれば身体が重く、身重な身体はうまく飛ぶことができなくなるそうです。そして隙ができた瞬間、パチン!と死がおとずれます。今までパチン!とカを殺してきた人は、あのカを妊婦と考えたことはあるでしょうか。妊婦さんをバットで殴り殺すような行為を、人は当たり前のように繰り返す。この当たり前に、あらためて生き物の特異な死にざまを学びました。
生き物の死にざまを読んでの感想
一つ一つの生き物のストーリーがとても胸をうつものでした。限りある命を精一杯に生きようとしていることは地球上の生き物にも全てに当てはまるのかもしれないと感じると、他人事とは思えず一つ一つの物語に興味を抱き接することができました。お陰で生き物に対する知識がつきましたし、生き物を見るめが変わり視野が広がりました。また命の尊さを改めて感じられる一冊となっており、多くの方の手にとってもらいたい本だと感じました。
生き物の死にざまがおすすめでない人
こんな人はおすすめしない
- 生き物に興味がない人にはおすすめしません。
- クモやセミの絵など、挿し絵でも見られない方は控えてください。
- 死にざまを受け止めることができない方。
- 長編ものが良い方にはおすすめしません。
- 生物学的なものを求める方にはおすすめしません。あくまでもエッセイです。
基本的には生き物に興味がある方にはおすすめです。生き物初級編のような短編エッセイ集なので、例えば通勤時間に一章読む、一つの生物の死にざまに対して短時間で理解する、というレベルだと楽しんでいただけると思います。一方で、生き物に対する研究をされている方など既に基礎知識をお持ちの方には不向きです。学術書のようなものではないです。総じて生き物に感心がない方には、生き物が死にゆく様など気持ち悪くさえ感じられる可能性もあるので控えていただいた方が良いと思います。
生き物の死にざまをおすすめしたい人
こんな人におすすめ
- 命の尊さを感じられる
- 生き物への知識が深まる
- 死にざまを知ることは生きざまを知ること
- 自然の摂理を感じられる
- なし
記載したとおり。
生き物への死にざまを知ることで、同時に生きざまを知れることができます。更に生き物への生死の知識が深まるほどに命の尊さを感じられるからです。複数の生き物について書かれているので難しく感じるかもしれませんが、すごく優しい文章で分かりやすく書いてあります。そのため、読み進めていくうちに、大枠として地球上の生き物は新たな生命を産み出すという共通の使命を持っていることなどの自然の摂理までも学びとれる本となっているからです。一方で、共通した使命を果たすも、その果たしかたは各々異なり、人類目線では想像もつかないような果たしかたに驚きと発見があり、わくわくしながら生き物の死にざまを学べるからです。