ご紹介する本
総合
読みやすさ
学び
面白さ
この本から学べるポイント
- 1:19世紀後半にフィッシュアンドチップスが発祥したこと
- 2:19世紀以降のイギリス社会の変化
- 3:イギリスにおける魚フライの起源
茨城県にお住いのペンネームスズさん34歳男性(職業:会社員・職員(正規雇用)?)から2021年10月頃に読まれたフィッシュ・アンド・チップスの歴史 英国の食と移民を読まれたレビューになります。
フィッシュ・アンド・チップスの歴史 英国の食と移民の内容
イギリスの国民食として有名なフィッシュアンドチップスの歴史を扱った本です。イギリスの料理として有名で、新聞のインクで味が変わるなどのエスニックジョークがあるほど親しまれている料理ですが、そもそもその発祥はどのような経緯で、どうして広まっていったのか、そして現在はどのようになっていてどうなっていくのかを食文化史の視点から調べて言っている本です。ある一つの食事をキーに一つの国の社会がどのように変わっていったかについても見ていくことができます。
フィッシュ・アンド・チップスの歴史 英国の食と移民の著者について
著者:パニコス・パナイー
デ・モントフォート大学の教授です。専門はヨーロッパ史で、食文化のほかイギリスの移民、ドイツ、第一次世界大戦の歴史を専門としています。
フィッシュ・アンド・チップスの歴史 英国の食と移民本の要約
この本から学べるポイント
- 1:19世紀後半にフィッシュアンドチップスが発祥したこと
- 2:19世紀以降のイギリス社会の変化
- 3:イギリスにおける魚フライの起源
イギリスの国民食として日本でも有名なフィッシュアンドの歴史について扱って言います。その発祥は19世紀後半であり、それの前身となる魚を食べる文化やジャガイモを食べる様になった文化的・社会的背景を歴史学から見ていき、どのようにイギリス国内で広まっていったのか、イギリスらしさを表す象徴の一つになったのかを資料・歴史を見ながら見ていく本です。発祥黄・最盛期・現在と歴史をたどりその販売形態や社会変化を見ていくことができる文化史の本でもあります。
19世紀後半にフィッシュアンドチップスが発祥したこと
イギリスで生まれたフィッシュアンドチップスはいつ生まれたのか、これを知ることができました。19世紀後半に生まれたようですが、そのおおもとは18世紀にはもうあったという面白い内容が書かれていました。ハナー・グラスというイギリスのレシピ本の歴史では有名な人がいるのですが、その中で現在のものとは違いますが、魚の油揚げの起源の話があり、ユダヤ人の魚の保存法がフィッシュアンドチップスに関係しているのではないかという話は面白かったです。
19世紀以降のイギリス社会の変化
第1章の最初に、「1966年全国フィッシュ・フライヤーズ連盟と~」という一文から始まります。この文章を見て、イギリスでは様々な組合があるとは聞いていたのですが、フィッシュアンドチップスの連盟まであるのかと驚きました。こののちにも、業界紙をもとに歴史を見ていく中で、歴史自体も重要なのですが、このようなファーストフード・ストリートフードの協会が存在し、その資料を基に歴史的な考察が可能なほどの資料があるという、マニアックな分野でもイギリスの歴史資料の多さを学びました。
イギリスにおける魚フライの起源
この食べ物が冷凍技術、漁業技術の発展とともに広まった料理だということはそれまでにも知っていたのですが、店舗経営者には移民が多く、イギリスにおける移民の活躍という視点でも見れるのは面白かったです。また、産業革命から技術発展をもとに労働階級層を主として広まっていったと思っていたのですが、もっとも広まったのは第1次世界大戦期から数十年であるということには驚きました。国民食だと思われているものが意外にも広く広まって100年程度しかたっていないというのは、イメージと現実が大きく異なるものだと学びました。
フィッシュ・アンド・チップスの歴史 英国の食と移民を読んでの感想やレビュー
和書で読めるフィッシュアンドの歴史を扱った珍しい一冊。イギリスの国民食がどうして開発されたのか、どのように広まっていったのか、いまやどんな意味を持っているのか、たった一食の料理を深堀していったのかが知ることができます。イギリスにおけるファーストフードのさきがけでもあり、移民たちが広めた料理ともいえるので移民史や生活史に興味のある人にもお勧めです。また、各所で資料の出典から関連している協会・組合の存在を知ることができ、イギリスの社会システムの一面も見れる面白い一冊です。
講義で関心を持った人は『フィッシュ・アンド・チップスの歴史ー英国の食と移民ー』をご覧ください。 pic.twitter.com/OXAzBgh4SA
— 山下ゼミ@日大経済 (@yamashita_semi) May 10, 2022
パニコス・パナイー『フィッシュ・アンド・チップスの歴史ーー英国の食と移民』栢木清吾訳(創元社、2020年)面白かった。生魚と拍子木切りのジャガイモを揚げた料理がどこからやってきて、どうやってイギリスの国民食となっていったのか。シンプルな料理にこんなにも多様な国の人が絡んでるなんてね。 pic.twitter.com/PRSdCRw2u2
— ゆうと (@yu_and_fukama) May 8, 2021
フィッシュ・アンド・チップスの歴史 英国の食と移民がおすすめでない人
こんな人はおすすめしない
- イギリスに興味のない人
- 食文化史に興味のない人
- イギリス料理のブラックジョークを真に受けている人
- 歴史に興味のない人
- 資料を基に考察していく文章を読みたくない人
この本はイギリスのある一つの料理を深堀して、その歴史・文化的な意味を深堀していった本です。イギリス料理というのはイギリス人もジョークにしているのですが、まずい料理というイメージがあるようです。おいしい料理のレシピを扱っているとかいう本ではないのですが、歴史的な背景・文化を考えてもそんなマイナスイメージをやすやすと話せるとは思いませんので、そのイメージを崩したくない人は読まない方がいいです。また、食文化の中でもイギリスの食を扱っているので、そのいずれかに興味のない人からすると想像が難しいと思うところがあるので読まない方がいいかと思います。
フィッシュ・アンド・チップスの歴史 英国の食と移民をおすすめしたい人
こんな人におすすめ
- イギリス文化に興味のある人
- イギリスの食文化に興味のある人
- イギリスの生活史に興味のある人
- 食文化史に興味のある人
- 移民の歴史に興味のある人
イギリスの国民食であるため、イギリスの生活史・社会変化の歴史がこの食事が広まっていくことに影響しているため、19世紀後半以降のイギリスにおける生活史の資料としてもとても面白い本だと思います。特に、一つの食事をキーにしているため、どのような要因でこの料理が開発されたのか、どのように受容されていくのか、最初期にはどんな風に思われていたのか、現在ではフィッシュアンドチップスとはイギリスでどういう意味を持つ料理となったのかとその流れと変容を詳細に扱っています。なぜにイギリスの食はよく思われていないのかなどにも言及していて、一つの国の人々の考え方を見る面でも非常に深い内容を知ることができます。