ご紹介する本
総合
読みやすさ
学び
面白さ
この本から学べるポイント
- 1:ひたむきに夢中になることの大切さ。
- 2:自身にとっての自信はこれだというものを作ること。
- 3:自身にとっての自信の根拠は他人に依拠しないこと。
東京都にお住いのペンネームみかちゃんさん28歳女性(職業:会社員・職員(正規雇用))から2021年1月頃に読まれた蜜蜂と遠雷を読まれたレビューになります。
蜜蜂と遠雷の内容
芳ヶ江国際ピアノコンクールというピアノコンクールを舞台にメイン4人が織りなす青春群像劇。4人はそれぞれ音楽に向き合いながらも色々な苦悩や状況を抱えている若者たちで、養蜂家の父と世界を転々として他のコンクール参加生と生き方に一線を画す風間塵、天才と持て囃された過去と母の死によりピアノが長らく弾けなかった栄伝亜夜、音大出身のサラリーマンで出場年齢制限ギリギリの高島明石、名門の海外の音楽学校に通う期待の新星、マサル・C・レヴィ=アナトール。それぞれが懸命にピアノを通して生きる様をコンクール期間という短い期間に焦点を当てて描き切った作品です。
蜜蜂と遠雷の著者について
著者:恩田陸
2005年『夜のピクニック』で第26回吉川英治文学新人賞及び第2回本屋大賞を受賞。2006年『ユージニア』で第59回日本推理作家協会賞を受賞。本作で史上初となる直木賞と本屋大賞のダブル受賞を果たした。
蜜蜂と遠雷本の要約
この本から学べるポイント
- 1:ひたむきに夢中になることの大切さ。
- 2:自身にとっての自信はこれだというものを作ること。
- 3:自身にとっての自信の根拠は他人に依拠しないこと。
「芳ヶ江国際ピアノコンクールで優勝した者は世界最高峰のS国際ピアノコンクールで優勝する」というジンクスがあり、日本国内の国際ピアノコンクールに数々の猛者たちが集まる。立場や環境がそれぞれ異なる4人は出会い、ピアノコンクールという自身の懸けてきたもので精一杯競い合い、またお互いのピアノを聴く中で相互理解を深め、かけがえのない仲間となっていく。ストイックにピアノを極めていく4人はこの出会いにより、またそれぞれ自身の人生へと向かっていく。
ひたむきに夢中になることの大切さ。
ひたむきに夢中になることの大切さについてですが、この物語では出会った4人はピアノの技術的には国際レベルというある一定以上のレベルに到達しており、ピアノの演奏は自己表現することが目的になっています。現実的にそのようなクラスに到達するには長く真剣にひとつのものに向き合ってきた練習時間が必要となります。しかしその到達点に届いたおかげで他の表現者と常のコミュケーションでは通わすことのできないレベルでの相互交流ができています。また、真剣に向き合ってきたことが演奏ひとつからでもわかるからこそ、お互いの背景が違えども、お互いを尊重してコミュニケーションがはかれています。何かひたむきに夢中になることは一見、自分のスキル向上などややりたいことやっているだけといった自分のためだけの行為に思えますが、最終的には他者との関わりに生きるのだと痛感しました。
自身にとっての自信はこれだというものを作ること。
自身にとっての自信はこれだというものを作ることについてですが、メイン登場人物4名は紆余曲折や深度は違えども、自分のピアノに自信があります。自分のピアノに自信がある上で、どこまで通用するのか、どこまで届くのか、といったところで心を悩ませています。根底に自分が真剣に向き合ってきたものがある、長く人生の中の時間を懸けてきたものがある自信は、落ち込んでいたり、悩んだりしているときにも無くなっているようできちんと自分を支えていて、前にも後ろにも進めないかと思われた背中をそっと押す力になるのだなと学びました。
自身にとっての自信の根拠は他人に依拠しないこと。
自身にとっての自信の根拠は他人に依拠しないことについてですが、特に登場人物の一人である栄伝亜夜について特に思ったことでした。環境が特殊であったこと、幼い頃からその環境下に置かれてしまっていたことが、彼女の「母の死に際しても自分のコンサートを聴きにきてくれた人の前で気丈に振る舞った」というトラウマを作り出したことは間違い無いのですが、自分の今ある姿を他人に任せてしまった結果でもあると思いました。しかしそれは幼い亜夜が自身でコントロールすることは不可能に近く、保護者こそがその周囲から亜夜を守るべきであったのに周囲の環境に押されてしまったためにこうなったのだろうというのもまた、学んだことの論拠のひとつです。
蜜蜂と遠雷を読んでの感想やレビュー
直木賞に相応しく、キャッチーで読みやすく、それでいて物語の層が幾重にも折り重なっており、夢中で上下巻を読み進めることができました。演奏シーンなどは本当に文章で上限できるものなのかと懐疑的でしたが、実際の物語中の文章を読んでみると演奏風景が目の前に広がってくるような気持ちになり、演奏を演奏として楽しむことができました。キャラクターもそれぞれ魅力的で、コンクールの場面ではみんながんばれ……!と手に汗を握る心地で読んでいました。爽やかな読後感は本当に気持ちがよかったです。エンターテイメントを感じました。
蜜蜂と遠雷がおすすめでない人
こんな人はおすすめしない
- 登場人物が増えるとこんがらがる人。
- 音楽に対して興味のない人。
- 男女の掛け合い程度ではなくガッツリ恋愛していてほしい人。
- ドロドロしたものが読みたい人。
- 何かダイレクトに啓発されたい人。
登場人物が増えると話の理解よりもまず人物の関係理解に脳のリソースが割かれてしまうという人にはお勧めできません。メインは4人ですがそれぞれ友人や家族、師匠などがいて、その人々もしっかり物語に関わってきますので、人物把握にいっぱいいっぱいになってしまうと物語の本当の美味しいところにたどり着くのが難しいのではないかと思いました。また、音楽に対してそもそも興味が薄い人も、どうしてこんなに頑張ってるの?と前に進めなくなるのではと思い、お勧めしません。他には登場人物にはガッツリ恋愛していてほしい、ドロドロした関係性が見たい、何かダイレクトに啓発されたい人にも毛色が違うのでおすすめできません。
蜜蜂と遠雷をおすすめしたい人
こんな人におすすめ
- スポ根系がすきな人。
- 頑張る若者たちの青春群像劇が見たい人。
- 男女混合ものの掛け合い、関係が好きな人。
- スポーツなど何かに打ち込んだ経験のある人。
- ピアノの経験がある人。
スポ根系がすきな人、頑張る若者たちの青春群像劇が見たい人については、ピアノという一見おとなしいイメージのものがテーマのアイテムとなっていますが、国際コンクールに挑むレベルの若者たちのお話なので、一種の個人技のスポーツでの競い合いとなんら変わらない熱度で物語が繰り広げられるためです。またまさしく青春群像劇なので、爽やかな頑張る若者の姿に元気をもらいたい人にはうってつけです。その中にちょっとした恋愛描写とまでいかないながらもお互いに思うところがある箇所もあり、男女混合ものの掛け合い、関係が好きな人にもピッタリだと思いました。そしてスポーツなど何かに打ち込んだ経験のある人、まさにピアノの経験がある人には頷ける箇所も多いのではないかと思い、より共感性高く読めると思うのでおすすめです。