文学・評論

【本要約】52ヘルツのクジラたち(著者: 町田そのこ)の書評とポイント解説を総まとめ!

ご紹介する本

52ヘルツのクジラたち

ジャンル: 文学・評論

著者: 町田そのこ

出版社: 中央公論新社

発売日: 2020/4/18

本の長さ: 260ページ

9

総合

9

読みやすさ

9

学び

9

面白さ

この本から学べるポイント

  • 1:1つの事に囚われてしまう怖さ
  • 2:辛いときには声をあげること
  • 3:身近な人であっても考えようとしなければその人の心のうちは分からないということ

神奈川県にお住いのペンネームてんさん22歳女性(職業:学生?)から2021年5月頃に読まれた52ヘルツのクジラたちを読まれたレビューになります。

52ヘルツのクジラたちの内容

親から虐待を受け、介護などで家族に人生を搾取されてきた貴湖は、昔祖母が暮らしていた町へと引っ越してくる。この時の貴湖は友人の美晴とアンさんに家族の元から助け出されてから人生をやり直していたが、大切な人を失い、また心に傷を負っていた。そして、その町で母親から「ムシ」と呼ばれ虐待される少年に出会う。少年は声を発さず、色々なことを諦めていた。貴湖はなんとか少年を助けられないかと美晴や周囲の人の力を借りながら奮闘する。

52ヘルツのクジラたちの著者について

著者:町田そのこ
理容師の職に就くも1年で退職し、様々な職を転々とした後は結婚して専業主婦となる。2008年に敬愛する作家である氷室冴の死をきっかけに小説を書き始めた。本書で第18回本屋大賞を受賞。

52ヘルツのクジラたち本の要約

この本から学べるポイント

  • 1:1つの事に囚われてしまう怖さ
  • 2:辛いときには声をあげること
  • 3:身近な人であっても考えようとしなければその人の心のうちは分からないということ

この物語では傷つき助けを求めていてもそれがなかなか人に届かない人を、広い海の中で誰にも届くことのない52ヘルツの声で鳴き続けるクジラになぞらえています。辛くてたまらないのに、声をあげられない、声をあげても無駄なのではないかと思ってしまう人の心情を丁寧に描いています。自らも傷ついた経験を持つ貴湖が少年の声にならない助けを求める叫びを必死に拾おうとしながら、自らの傷とも向かい合っていく物語です。辛いながらも最後には希望を見出すことができます。

1つの事に囚われてしまう怖さ

この物語は児童虐待が大きなテーマとなっているので、貴湖も少年も自分のことをないがしろにする家族に囚われて辛い思いをしていました。また貴湖は恋人にも依存するような状態になってしまい、また傷つきました。だから、家族や恋人に限らずとも何か1つの事に囚われて、それが全てだと思ってしまうことはとても怖いことだと思いました。しかし、大切な物であるほど、そこにしがみついてしまうということは起こりえる事だと思ったので心に留めておこうと思います。

辛いときには声をあげること

読んでいて、辛いときというのは視界が狭まって、声をあげることも怖くなるのだと思いました。声をあげても誰にも気づいてもらえないのではないか、意味が無いのではないかと考えてしまって、最初から諦めてしまうことがあります。私も辛いことがあってもなかなか人に相談できないという経験があるのでとても共感しました。でも、誰かに届いて助けてくれるという希望をもって声をあげることが大切なのだとこの物語に教えてもらいました。

身近な人であっても考えようとしなければその人の心のうちは分からないということ

この物語の中で、貴湖はとても身近にいたはずの人の心の内を全然分かっていなかった、分かろうとしていなかったということで、とても深い後悔を負います。つい、身近にいる人の事は深く考えなくても分かっている気になってしまうことがよくあると思います。でも、しっかり向き合って自分から分かろうという努力をしなければ相手の気持ちを理解することなどできないのだと思いました。だから理解しようとする努力が大切なのだという事が学んだポイントです。

52ヘルツのクジラたちを読んでの感想やレビュー

読んでいる間何度も辛い気持ちになりましたが、最後には希望が見えて読んでよかったと思える作品でした。孤独な自分を52ヘルツのクジラに重ね合わせる貴湖と少年の姿とその過去は読んでいて胸が苦しくなりましたが、思わぬ人の優しさに助けられたりもして、それが素敵だと思いました。登場人物の一人であるアンさんの存在が物語をさらに深めていたように思います。目の前の大切な人の52ヘルツの声を聞き逃さないようにしようと考えさせられた1冊でした。

52ヘルツのクジラたちがおすすめでない人

こんな人はおすすめしない

  • 今現在メンタル的にあまり元気じゃない人
  • 児童虐待などのシーンに耐えられない人
  • 世界観に没頭したいという人
  • 軽い読書を楽しみたい人
  • 明るい小説を探している人

児童虐待という重いテーマを扱っているので、どうしても暗くて辛いシーンが続く場面があります。だから、小説を読んで明るい気持ちになりたいという人にはおすすめできません。また心情描写がリアルなので、児童虐待の描写に耐えられない人や今元気が足りない人は引っ張られて辛い気持ちになってしまうかもしれません。長編なので軽い読書を楽しみたい人にも向かないと思います。小説はその世界観に没頭したいという人にも、現代日本が舞台なのであまり向かないかもしれません。

52ヘルツのクジラたちをおすすめしたい人

こんな人におすすめ

  • 重厚な人間ドラマを読みたい人
  • 物語を通じて社会の問題を考えたい人
  • がっつり読書を楽しみたい人
  • 辻村深月の小説が好きな人
  • 自分が今元気だと思える人

本屋大賞受賞作でもあるこの物語はとても色々な感情が詰まっていて重厚な人間ドラマとして楽しむことができるし、長編小説なのでがっつり読書を楽しみたいという人にもおすすめです。また、児童虐待や様々な人の生きづらさやそれに対する理解の無さといった社会問題が多く描かれているので、そういう事を考えたいという人にもおすすめです。主観ですが、希望の見せ方などが辻村深月さんの小説に近いところがあると思います。少し重いテーマなので自分が元気な時に読んでほしいです。







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