文学・評論

【本要約】滅びの前のシャングリラ(著者: 凪良ゆう)の書評とポイント解説を総まとめ!

ご紹介する本

滅びの前のシャングリラ

ジャンル: 文学・評論

著者: 凪良ゆう

出版社: 中央公論新社

発売日: 2020/10/7

本の長さ: 334ページ

8.7

総合

8

読みやすさ

9

学び

9

面白さ

この本から学べるポイント

  • 1:世界の状況が変われば、常識など簡単に変わってしまうことに気づかされた。
  • 2:「幸せ」について深く考える機会を与えられた。
  • 3:本当の強さとは何なのかを学んだ。

香川県にお住いのペンネームひまわりさん55歳女性(職業:会社員・職員(非正規雇用)?)から2022年2月頃に読まれた滅びの前のシャングリラを読まれたレビューになります。

滅びの前のシャングリラのYouTube(ユーチューブ)


「滅びの前のシャングリラ」についてYouTube(ユーチューブ)で紹介している動画がないか調べてみました。
「山田ユカ」チャンネルで紹介されているので良ければ合わせて見てみてください。

滅びの前のシャングリラの内容

ある日、突然、1か月後に地球が滅亡すると告知される。はじめは疑心暗鬼だった人々は、徐々に事態の深刻さに気付き、世の中の秩序は乱れ、混沌とした世界がひろがっていく。そんな状況の中、学校で、いじめを受けていた少年、その少年の憧れの美少女、少年の母親、殺人を犯したヤクザ、人気絶頂のアイドル歌手など、さまざまな人々が、手探りながらも、それぞれの人生を生き抜いていこうとする。彼らがそんな世界の果てに見つけ出したものはいったい何なのか。

滅びの前のシャングリラの著者について

著者:凪良ゆう
2006年「恋するエゴイスト」でデビュー、2020年「流浪の月」で第17回本屋大賞を受賞する。常に「どこまでも世間と相いれない人たち」を描くことで高く評価されている。

滅びの前のシャングリラ本の要約

この本から学べるポイント

  • 1:世界の状況が変われば、常識など簡単に変わってしまうことに気づかされた。
  • 2:「幸せ」について深く考える機会を与えられた。
  • 3:本当の強さとは何なのかを学んだ。

17歳、江那友樹(えな ゆうき)は、ぽっちゃり体系の見た目はちょっとさえない男子高校生である。学校では同級生からのいじめにあっていたが、その状況を冷静に分析しつつ、母親に迷惑をかけまいと気を配る心優しい少年でもあった。母親の静香は、一見、口の悪い女性だが、友樹に愛情をありったけのそそぐ、友樹にとっては大切な存在だったからだ。そんなある日、首相の記者会見が開かれ、1カ月後に地球が滅亡することが告げられる。動揺する友樹だったが、こんな最悪の状況の中、東京に向かおうとする初恋の女性、雪絵を守るため、彼女に付き添う決心をする。

世界の状況が変われば、常識など簡単に変わってしまうことに気づかされた。

この物語には「殺人をおかしたヤクザ」が登場する。普段なら、怖いと感じ、嫌悪感すら抱いてしまうのだが、この物語では、世界の滅亡が迫る状況の中、殺人や放火、略奪や強姦などがはびこり、秩序や法といったものがまったく役割を果たさない状況になっている。そんな状況に置いて、このヤクザを「頼もしい」「傍にいて欲しい」と、いつのまにか感じている自分自身に驚かされていた。世界の状況が変われば、それまでの常識など、いとも簡単に覆されてしまう事実を目の前につきつけられた気がする。

「幸せ」について深く考える機会を与えられた。

本書には「幸せ」について語られるシーンがいくつか登場する。人がうらやむような一見恵まれた状況にいながら、いっこうに幸せを感じていない人たち、同じ人たちが、けっして幸せとは言えない、はたから見れば最悪の状況下において、他の人から「幸せそうだ」と言われたり、自分自身で幸せだと感じたりする。「幸せ」とはこんなにも実体のない、つかみどころのないものだったのかと、改めて「幸せ」について深く考えさせられた作品だった。

本当の強さとは何なのかを学んだ。

主人公はいわゆる「いじめられっ子」である。いじめられても抵抗もせず、口答えもせず、かといって泣くわけでも、すねるわけでも、必要以上に悲観するわけでもない。一方で、殺人をおかしたヤクザは、暴力で、あらゆるものを屈服させる。また、主人公の母親は、どんな状況においても、けっして息子を見放さなず、全力で守ろうとする。その決心は何物にも揺るがない。彼らの姿を見て本当の強さとは何なのか、そのことについて改めて考えさせられた。

滅びの前のシャングリラを読んでの感想やレビュー

「暴力」や「死」のシーンも多く、読んでいてキツイと感じる場面も少なくなかったが、そんな状況下においても、主人公の少年のゆるぎない思いと、その母のまっすぐで清い強さが、進むべき道を照らしてくれている、そんな風に感じられた作品だった。私自身の中にはないと思い込んでいた「幸せ」が、もしかしたら、見落としていたのかもと思えはじめて、もう一度探してみようという気分にさせてくれた。耳なじみのいい言葉で表面上の「希望」を与えるのではなく、心の底から湧き上がってくるような、本当の「希望」をこの本に与えてもらった気がする。

滅びの前のシャングリラがおすすめでない人

こんな人はおすすめしない

  • 極度に悲観的な人
  • 暴力に対して、嫌悪感のある人
  • 「死」に対する恐怖感の強い人
  • なし
  • なし

「暴力」や「死」などのシーンが多いので、これらに対する恐怖感や嫌悪感の強い方にとっては、ちょっと読むのがきついと感じられるかもしれない。また、物語の核となるエピソードが「地球の滅亡」であるので、極度に悲観的な方にもおすすめしにくい作品だと思う。ただ、読むことによって絶望的になるような作品ではけっしてない。傷だらけになって、やっとたどり着いた先に見えるものは、最初から輝いていたものを超える最高の輝きを放つのだということも、知って欲しいと思える作品だ。

滅びの前のシャングリラをおすすめしたい人

こんな人におすすめ

  • 「幸せ」になりたいと願っているすべての人たち
  • 「強くなりたい」と願っているすべての人たち
  • 常識に縛られているすべての人たち
  • なし
  • なし

私たちは「常識」というものに捕らわれがちだ。この物語は、その常識が一変する様をまざまざと見せつけてくれる。どれだけ、あっけなくて、脆いものなのかを教えてくれる。私を含め「常識」にしばられている方たちに、ぜひ、この感覚を一度、味わってほしい。また、「幸せになりたい」「強くなりたい」と感じている方たちにも、「幸せ」や「強さ」とはいったい何なのかを、いろんな形を示しながら、私たちに問いかけてくれる本書をぜひ、おすすめしたい。足元から、なにかが崩れおちていくような感覚や、ふと背後に気配を感じ、振り返ると、そこにこれまで見たこともなかった何かがそびえたっているかのような感覚、さまざまな感覚を味わえると思う。







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