ご紹介する本
今だけのあの子
ジャンル: 文学・評論, ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
著者: 芦沢央(あしざわ よう)
出版社: 東京創元社
発売日: 2017/4/12
本の長さ: 320ページ
この本から学べるポイント
- 1:女の友情も捨てたものではないということ。
- 2:優しさは必ずしもストレートに表現されるとは限らないということ。
- 3:いくつになっても友情は大切だということ。
京都府にお住いのペンネームyucocoさん38歳女性(職業:会社員・職員(非正規雇用)?)から2022年8月頃に読まれた今だけのあの子を読まれたレビューになります。以下からKindleや中古で購入できるので興味がある方は是非見てみてください
今だけのあの子の内容
様々な年代の女の友情を描いた小説です。
大学時代の同期の中で、一人だけ結婚式の招待状をもらえなかった女性(「届かない招待状」)。亡き親友の部屋を訪れ、なぜか帰ろうとしない女子中学生(「帰らない理由」)。子どもがらみの事件をきっかけに、苦手なママ友ともめることになった女性(「答えない子ども」)。一緒に漫画家を目指していた親友とすれ違うことになった女子高生(「願わない少女」)。老人ホームで隣室に住む女性の家族トラブルの世話を焼くことになった女性(「正しくない言葉」)。女の友情というと、少しドロドロした印象を抱く人もいるかもしれませんが、この物語は一見そう見えるようで、本当に相手を思いやる女性たちの姿が描かれています。
今だけのあの子の著者について
著者:芦沢央(あしざわ よう)日本の女性ミステリー作家です。ファンの間では、少し嫌な気持ちになるミステリーを書くことで定評があります。
私が思うに、非常に聡明な女性で、ミスリードを誘うのがうまい方だと思います。
Youtube
たくみが大好きな作家さんに聞きたいこと全部聞きます【芦沢央/神の悪手】
今だけのあの子本の要約
この本から学べるポイント
- 1:女の友情も捨てたものではないということ。
- 2:優しさは必ずしもストレートに表現されるとは限らないということ。
- 3:いくつになっても友情は大切だということ。
テーマは女の友情です。タイトルに「今だけのあの子」とあるように、その年代に友達だった女性たちの物語になっています。
タイトルの通り、その友情は「今だけ」なのかもしれませんが、どの話にも本当に相手を思いやる女性の姿が描かれていて心が温かくなります。
また、著者はミステリー作家なので、作品中にはミスリードを誘う表現や大どんでん返しなども描かれています。
女性同士の友情物語としても楽しめるし、ミステリー小説としても十分に味わい深い1冊です。
短編集ではありますが、各話が微妙につながっているので、そちらも楽しんでもらえると思います。
女の友情も捨てたものではないということ。
女の友情は捨てたものではない。女性の皆さんは、女同士の友情のもろさを感じられたことがあるかと思います。
学生でも社会人でもママ友でも、ちょっとしたことがきっかけとなって仲が良かった友人同士の間に亀裂が入り、もう元には戻せなくなることもあります。
しかし一方で、いざという時に女友達が誰よりも味方になってくれたという経験もあると思います。
私はこの物語を読んで、どんな形であれ、友達でいる間は精一杯相手を思いやっている女性の姿に感動しました。
自身の友達のことを思い返して、感謝したい気持ちでいっぱいになりました。
優しさは必ずしもストレートに表現されるとは限らないということ。
優しさは必ずしもストレートに表現されるとは限らない。
親友には誰よりも自分のことをわかってほしいと思うし、自分が今欲しい言葉をかけてほしいと思うこともあります。
厳しい人は自分に敵対心を持っている人で、面倒な人。そんな風に考えてしまうこともありますが、一見「優しくない」態度で実は精一杯相手を大切に思っていることもあります。相手のためを思えばこそ、自分が悪者になっても構わない。そんな気持ちで、相手を支えている女性いるでしょう。普通に過ごしていたら気付かないそんな当たり前のことに、私はこの物語を読んで気づかされました。
いくつになっても友情は大切だということ。
いくつになっても友情は大切。この物語には学生から老女まで、本当に幅広い年代の女の友情が描かれていました。
特に「友情」で頭を大半を悩ますのは学生時代だと思います。親友と二人だけの世界を築くわけにもいかず、周囲には同級生の目もあります。
自分たちが望むと望まざるとにかかわらず、トラブルに発展することもあるでしょう。それでも、この年代の女の子にとって友人の存在はとてつもなく大きなものです。
しかしそれは、学校を卒業した後も同じです。社会に出ても、ママになっても、おばあちゃんになっても、その時々の友情を大切にしていきたいと思えました。
今だけのあの子を読んでの感想やレビュー
この物語は、私にとって初めて読んだ芦沢央さんの小説でした。テーマである友情も良かったのですが、私が特に気に入ったのは「大どんでん返し」と「ミスリード」です。各話が微妙につながっているのも、非常にうれしい要素でした。ついつい何度もページを戻ったり、読了後も読み返したりしてしまいました。
いろいろな形の友情があり、私自身の友達との関係とも重ねてみたりもしました。私は人とトラブルを起こしたり人に嫌われたりしたくないタイプなので、思っていても友達に本当のことを言えなかったこともあります。しかし、本当のやさしさや、本当に相手を思いやるとはどういうことだろうと考えずにはいられなくなりました。
物語の中で女性たちが精一杯友達を大切に思っていたように、私もいくつになっても友達を思いやる人間でいたいと思いました。
今だけのあの子がおすすめでない人
こんな人はおすすめしない
- ミステリー小説が苦手で、いろいろ考えながら読むことにストレスを感じる人。
- 恋愛物語が好きで、胸がきゅんとなる物語展開を期待している人。
- 日頃から男性が主人公の話を中心に読み、女性主人公の物語は苦手だという人。
- なし。
- なし。
この物語は友情物語ですが、ミステリー要素も詰まっています。読書をするときにあまり難しいことを考えたくない、ミステリーは頭が混乱するから苦手だと思う人には合わないかもしれません。また、女の友情がテーマになっていますので、男性目線の話もありはしますが、胸がきゅんとなるラブストーリーは入っていません。そういった物語を期待されている場合は、外れたと思われるかもしれません。男性目線の話もあるとはいえ、基本的には女の友情を描いた物語で、主人公はほぼ女性です。女性が主人公の物語や、女性ばかり登場する物語に抵抗がある人にも合わないかもしれません。とはいえ、食わず嫌いで読まないのはもったいない物語なので、多くの人に読んでもらいたいと思います。
今だけのあの子をおすすめしたい人
こんな人におすすめ
- 長編を読むのが苦手な人。
- ミステリー小説が好きで、だまされるのも好きな人。
- 少し変わった友情物語を読んでみたいという人。
- なし。
- なし。
まず、短編集なので長編が苦手な人にとってはとっつきやすいと思います。どこから読んでもらってもいいのですが、各話は微妙につながっているので、少しずつでも全部読むことをお勧めします。著者はミステリー作家であり、他の作品でもミスリードを誘うのが非常にうまいです。この物語は友情がメインですが、ミステリー要素もちりばめられているので、ミステリー好きで「大どんでん返し」に引っかかるのが好きな人はぜひ読んでください。森博嗣さんや米澤穂信さん、乾くるみさんなどが好きな人には合うと思います。また、これは友情がテーマですが、いわゆる熱い青春ストーリーではありません。こんな友情の形もあるのか、と思える部分も描かれています。普通の友情物語に飽きた人は、こちらに挑戦してみてください。