ご紹介する本
言葉の展望台
ジャンル: 文学・評論, 評論・文学研究
著者: 三木那由他
出版社: 講談社
発売日: 2022/7/21
本の長さ: 160ページ
この本から学べるポイント
- 1:日常の言葉遣いにひそむ力学を解きほぐしていく本
- 2:マンガ・アニメなど目にする言い回しが実際はどういう効果を持っているのか、についての哲学的分析
- 3:「誤解させてしまったら申し訳ない」というテンプレ謝罪が実は自分の責任回避するために使われる言い回しだという指摘
埼玉県にお住いのペンネームゆうたろうさん23歳男性(職業:学生?)から2022年10月頃に読まれた言葉の展望台を読まれたレビューになります。以下からKindleや中古で購入できるので興味がある方は是非見てみてください
言葉の展望台の内容
実際に大学で哲学の先生として教えている著者が、日常にあふれる言葉遣いやSNSに氾濫する言い回しについて感じた違和感やもやもやを著者の専門である言語哲学の知見を使って分析していく哲学エッセイです。著者は哲学研究者ですが、哲学を学んでいる人でも親しみやすいゲームやアニメ・マンガ、あるいはSNSで使われる言い回しなどを取り上げてるので読みやすいです。また、哲学的分析もかなりがっつりやっているので哲学をこれから勉強したい・興味がある、という人も飽きさせない内容になっています。
言葉の展望台の著者について
著者:三木那由他著者は京都大学で言語哲学の論文を書き博士号を取得した哲学・言語学の研究者で、日常の言葉遣いからそこに潜むコミュニケーションや力学を学問として分析している新進気鋭の研究者です。
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言葉の展望台本の要約
この本から学べるポイント
- 1:日常の言葉遣いにひそむ力学を解きほぐしていく本
- 2:マンガ・アニメなど目にする言い回しが実際はどういう効果を持っているのか、についての哲学的分析
- 3:「誤解させてしまったら申し訳ない」というテンプレ謝罪が実は自分の責任回避するために使われる言い回しだという指摘
言語・ことば・コミュニケーションについて興味のある人、マンガ・アニメ・映画などに出てくるセリフがどんな効果を持っているかについて興味のある人、SNSやニュースに使われている言葉遣いになんと説明できない違和感を感じる…といったとにかく広く「ことばについて興味がある」と思っている人にはうってつけの本で、現在大学で哲学を教えている若手の言語哲学者である著者が、自身のオリジナリティあふれる視点から哲学的に日常の言葉遣いを分析し、そこに隠れているコミュニケーションの力学をエッセイ風に解き明かしていきます
日常の言葉遣いにひそむ力学を解きほぐしていく本
コミュニケーションや言葉遣いときくと、「だれでも小さいころから毎日やっていることだからたいして学ぶことはないだろう」と思ってスルーしてしまうが、いちど立ち止まって日常の言葉遣いがどう使われているか、どのような意図で使われているかについて考えてみると、じつは人のコミュニケーションは自分が思っているよりもかなり複雑なプロセスにもとづいて行われていることがわかる、という新鮮な驚きを読んだ人に提供してくれる
マンガ・アニメなど目にする言い回しが実際はどういう効果を持っているのか、についての哲学的分析
例えば、よくマンガ、アニメもしくは映画などに出てくるシチュエーションの一つに、主人公が施設や病院から抜け出そうとしているが、施設の係員の人に見つかりこのままでは外に出ることができないとなって窮地にいたるが、主人公に同情的な係員がまるで誰も聞いていないかのように「私はいまから後ろの棚のファイルを整理するけど、ちょっと数が多すぎてあんまり周り見られないからもしかしたら誰か脱走してしまうかもしれわ…」という状況がある。著者は、こういったシチュエーションで「なぜ直接『通れ!!』といわずに見て見ぬふりをするのか?」という点について「係員は脱走を防がなくてはいけない立場のため、大っぴらに主人公を逃がしてしまうと職務違反となり自分の身があぶない。その代わり、自分が気を抜いているうちに逃げてしまったのだ、とすることにして、自分は決して脱走に手を貸したわけではないと主張する効果があるのだ」と分析している
「誤解させてしまったら申し訳ない」というテンプレ謝罪が実は自分の責任回避するために使われる言い回しだという指摘
著者は、失言をした政治家やタレントが記者会見などで口にする「そのような意図はありませんでしたが、誤解させてしまったら申し訳ありません」という発言を分析し、このフレーズは一見自分の非を認めて誤っているように聞こえるが、実際は「自分は問題のある発言をしてはいないが、もし他人からみてそう聞こえてしまったのなら、自分が悪かった」というように「自分の発言に問題があるのではなく、他人の解釈によっては問題があるようにも聞こえてしまうので、その点については誤る」という態度で、相手が勝手に問題発言だと解釈したのだと聞き手に責任転嫁する意味合いを含んでいると指摘している
言葉の展望台を読んでの感想やレビュー
著者はまだ世間的には知られていないが、言語哲学というガチガチの学問と老若男女問わず関心を持っているポピュラーカルチャーやSNS上でのやりとりいった題材を見事なバランスで融合させて、哲学に興味ある人もそこまで強くを学問を学びたいわけでもない…という人も惹きつける本を生み出した。加えて、ただ日常のコミュニケーションを分析するだけでなく問題を含んだ言い回し(誤解させてしまったらすまない、という表現や「犬笛」など)も取り上げて社会的な側面も兼ね備えた問題提起の本にもなっている
言葉の展望台がおすすめでない人
こんな人はおすすめしない
- 内容が内容なので、ことばについて文章を使って書いているのでややこしいのが苦手な人にはむかない
- 著者が生活しているうえで感じた違和感やひっかかりについて書いているので取り上げられる話題に偏りはある
- 著者にはきちんと手取り足取り教えてほしい、という受動的な人には向かない
- なし
- なし
基本的にすべての人におすすめですが、ことばやコミュニケーションといった話題について文章を使ってずっと説明していくタイプの本なので、よくある「○○でもわかる! アドラー心理学」とか「マンガでわかる! ○○」といったビジネス書のように、その都度図解やイラストによるまとめが欲しいという人にはあまり向かないかもしれません。
むしろ、読みながら自分で内容を咀嚼し、まとめることができる人や本の内容を読みながら著者の言うことを鵜呑みにするのではなく、自分で問いを立てることのできる人だとより楽しみながら読めると思います
言葉の展望台をおすすめしたい人
こんな人におすすめ
- ニュースやSNSなどで使われている言葉遣いについてなんだかもやもやした気持ちを持っている人
- 哲学に興味のある人
- 研究者が何を考えているか知りたいが、正直あまり難しい表現や説明を読むのは得意ではないという人
- 言語・コミュニケーションについて興味のある人
- ゲーム・マンガ、アニメについて考えてみたいという人
ゲームやマンガを読むのが好きだが、ただ読むだけでなく自分なりに考察をしてみたいと思う人にとっては、本書は、どんな作品にも書くことのできない「ことば」「コミュニケーション」という観点から様々なポピュラーカルチャー作品を分析しているので作品考察の手がかりを与えてくれる。また、題材も幅広く、著者独自の視点からの分析もあり、ほかの哲学書やことばについて考察した本ともことなった視座によって描かれているためことば・コミュニケーションについて考えてみたい、興味のあるという人には一読の価値があります。哲学者としての著書の考えがエッセイという形で展開されているため、何回過ぎる内容になることもないが、かといって簡単な内容でもないという絶妙なレベルで書かれています