ご紹介する本
総合
読みやすさ
学び
面白さ
この本から学べるポイント
- 1:自由を求めることの大切さ
- 2:社会的名誉より、プライヴェートなものを大事にするのもいいということ
- 3:一人の女性の活躍
埼玉県にお住いのペンネームINさん34歳女性(職業:その他)から2021年10月頃に読まれた翼をくださいを読まれたレビューになります。
翼をくださいの内容
この本は、美術をテーマに書くことの多い小説家・原田マハが2009年に書いた小説です。1930年代の日本とアメリカを主な舞台とした、飛行機による世界一周という偉業をめぐる人々の物語です。原田氏は、1937年に世界一周飛行に挑んだ実在の女性飛行家のアメリカ人、アメリア・イアハートをモデルに、エイミー・イーグルウィングという人物を作り出し、彼女を中心に物語を作りました。カメラマンの山田順平や、新聞記者の青山翔子といったキャラクターはフィクションの存在ですが、1939年に世界初の世界一周飛行を実現した純国産機「ニッポン号」の話を元に、架空の新聞社や飛行士、支援者達を作り出し、物語を動かしました。
翼をくださいの著者について
著者:原田マハ
1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部日本文学科、早稲田大学第二文学部美術史学専修卒業後、馬里邑美術館や伊藤忠商事、森美術館設立準備室を経て、ニューヨーク近代美術館に勤務。2002年にフリーのキュレーターとして独立した後、執筆活動を開始し、2005年に処女作「カフーを待ちわびて」が第1回日本ラブストーリー大賞を受賞。キュレーターとして働いた経験を生かして執筆した、美術をテーマにした小説を多く書いている。
翼をください本の要約
この本から学べるポイント
- 1:自由を求めることの大切さ
- 2:社会的名誉より、プライヴェートなものを大事にするのもいいということ
- 3:一人の女性の活躍
この小説の要点は、史実(エイミー・イーグルウィング、ニッポン号)とフィクション(山田、翔子や、他の飛行士や仲間達など)をミックスして、女性の活躍と勇気を描いた、感動するストーリーとなっていることです。また、当時の戦争にまつわる歴史の動きなどもよくわかり、このような時代に世界一周飛行という夢を追った人々が本当にいたのだなと感銘を受けます。原田氏の小説らしい、誠実に夢を追う登場人物が中心に物語は進み、読後感がさわやかです。
自由を求めることの大切さ
この話の軸はなんといっても、主人公エイミー・イーグルウィングが純粋な自由を求めて飛行し、それを突き詰めることです。話の中盤でエイミーの運命は歴史に翻弄されて大きく変わりますが、自分の自由を尊重しながら大きな選択をするエイミーに、現代の私達読者は学ぶものがあります。自由とは何か、どうしたら自由になれるのか、どんな状況であっても自由を尊重するということはどういうことなのか、といったことを考えさせられます。
社会的名誉より、プライヴェートなものを大事にするのもいいということ
夢を追うことで社会的名誉を勝ち取りたいという人も多いものですが、この小説では、恋愛や家族や仲間といったプライヴェートなものを大事にするというチョイスもありだ、ということが書いてあります。大きな仕事を前にすると、なかなかできることではありませんが、人生はそれだけではない、という原田氏からのメッセージが書かれているように感じます。自分が今まで飛行機に乗ってきたのはどうしてなのか?何がしたかったのか?とエイミーが考える姿に、私達も自分はどうかと考えるきっかけをもらえます。
一人の女性の活躍
原田氏はインタビューにて、小説を書くことで、女性を元気づけて応援するというのが自身の使命だと言っているほど、女性をテーマにした作品を多く書いているようです。フェミニズムといったキーワードに興味がある人にはひっかかる小説だと思います。この本では、まさに主人公が将来の希望を持ち若く才気にあふれた女性で、彼女が何を成し遂げたいのか、何を成し遂げたのか、ということについて書かれています。読者が同じ女性であればなおさら、主人公に感情移入してしまいます。
翼をくださいを読んでの感想やレビュー
もう一人の主人公である翔子は、エミリーや山田の物語を知った後の人生に大きな影響を受けます。エミリーだけだと、昔の話を元にした小説だなで終わってしまうのかもしれませんが、翔子がいることで、現代の私達により身近な物語となります。この小説をきっかけに、実在したアメリア・イアハートのドラマチックな人生のあり方を知ったり、また、物事を遂行するには、飛行士のような表に出る人だけでなく、山田や翔子のような影の立役者という立場の人も大切だなと改めて考える機会になりました。
翼をくださいがおすすめでない人
こんな人はおすすめしない
- 飛行機に興味がない人
- 史実を一部のストーリーに混ぜ込んだ小説が苦手な人
- 感動的なストーリーが苦手な人
- 女性が活躍する小説に興味がない人
- 歴史に興味がない人
この小説は飛行士の話なので、飛行機や飛行士に興味がない人にはつまらないと思います。手に汗握る飛行シーンなど、まるで映画を見ているかのようなリアルな描写がされています。また、この話の舞台は戦前の日本やアメリカですので、当時の雰囲気がどのようなものだったのかを学びたい人にはよいのですが、歴史に興味がなければ苦痛かもしれません。それから、原田氏の小説にはよく、一生懸命夢に向かって動いている人が出てくるのですが、素直で一直線なタイプのエミリーは、まさに原田氏の小説らしい主人公です。登場人物や展開のアツさが苦手な人にはおすすめしません。
翼をくださいをおすすめしたい人
こんな人におすすめ
- 夢を追いかけることは大切だと思っている人
- 原田氏の美術以外の小説を読んでみたい人
- 戦前の世界情勢を小説という形で学びたい人
- 仕事の面白さが書かれた小説を読みたい人
- 飛行機や飛行士の世界に触れたい人
原田氏の小説にはいつも仕事に一生懸命打ち込む人が出てきます。主人公は画家だったり、学者だったりするのですが、誠実に仕事を遂行しようと努力している人ばかりです。また、原田氏は、ゴッホやピカソ、モネなど、世界的な芸術家にまつわる小説で人気が出た作家ですが、しかし実は本作のようなアート抜きの感動ストーリーも書いています。美術の方から読み始めて、この作家は他にどんなのを読んでいるのかなと思った時にぴったりなのがこの本です。そして、歴史は歴史書などで読むと面白さがわかりづらいですが、本作のような小説という形ではよりリアルに物事を想像でき、また登場人物を身近に感じられるものです。