文学・評論

【本要約】真夜中のマリオネット(著者: 知念実希人)の書評とポイント解説を総まとめ!

ご紹介する本

真夜中のマリオネット

ジャンル: 文学・評論

著者: 知念実希人

出版社: 集英社

発売日: 2021/12/15

本の長さ: 344ページ

9.3

総合

9

読みやすさ

9

学び

10

面白さ

この本から学べるポイント

  • 1:やっぱり知念実希人というミステリー作家はすごい
  • 2:ありきたりなテーマでも面白い作品は作れるのだということ
  • 3:ラストシーンの質がミステリーの良し悪しを決定するのだと実感

香川県にお住いのペンネームひまわりさん55歳女性(職業:会社員・職員(非正規雇用)?)から2022年3月頃に読まれた真夜中のマリオネットを読まれたレビューになります。

真夜中のマリオネットの内容

殺人を犯した後、遺体をバラバラに解体するという恐怖の殺人鬼「真夜中の解体魔」による被害者が次々と発生していた。婚約者がその犠牲となった、救急医の秋穂は、その悲しみを仕事でふりはらうかのように、今日も救命業務に邁進していた。そんなある日、交通事故で重傷をおった少年が運ばれてくる。秋穂の賢明な判断と治療で一命をとりとめた少年だったが、なんと彼自身には殺人鬼「真夜中の解体魔」の容疑がかけられていた。怒りを抑えきれず少年に復讐しようとする秋穂だったが、目を覚ました少年は必至で無実を訴え始める。

真夜中のマリオネットの著者について

著者:知念実希人
内科医として勤務する傍ら、数多くの小説を執筆している。「死神」シリーズ、天久鷹央の推理カルテシリーズ、「神酒クリニックで乾杯を」シリーズが有名。2021年執筆の「硝子の塔の殺人」は「このミステリーがすごい!2022年版」にランクイン。

真夜中のマリオネットのYoutube


「真夜中のマリオネット」についてYouTube(ユーチューブ)で紹介している動画がないか調べてみました。
「なっぴチャンネル」チャンネルで紹介されているので良ければ合わせて見てみてください。

真夜中のマリオネット本の要約

この本から学べるポイント

  • 1:やっぱり知念実希人というミステリー作家はすごい
  • 2:ありきたりなテーマでも面白い作品は作れるのだということ
  • 3:ラストシーンの質がミステリーの良し悪しを決定するのだと実感

救命医の秋穂は、婚約者を「真夜中の解体魔」と呼ばれる殺人鬼に殺され、悲しみに明け暮れていた。そんなある日、秋穂のつとめる病院に交通事故で瀕死の状態の美しい少年が搬送されてくる。なんとか彼の命を救った秋穂だったが、その後、警察から、彼が「真夜中の解体魔」の疑いをかけられていると知って愕然とする。その後、意を決して彼を殺そうと部屋に忍び込む秋穂だったが、目を覚ました少年に「自分は犯人ではない」と涙ながらに訴えられ困惑する。果たして、彼は本当に無実なのか。

やっぱり知念実希人というミステリー作家はすごい

知念実希人の作品は、これまでいくつも読んできて、この作品は、これまでとは少し毛色が違う作品だなあと感じながら読んでいた。これまでの作品にくらべて、少し暗くて重いイメージが強いと感じたのだ。これまでと違う世界を描くことに挑戦したことにも驚かされたが、まだ、新しい引き出しがあるのだということにも驚かされた。さらに中盤から後半にかけての読者を惹きこんでいく、圧倒的なパワーにも恐れ入った。この作者の「読者を自分の世界に惹きこむ力」には想像を超えたものがあると思った。

ありきたりなテーマでも面白い作品は作れるのだということ

最初、このミステリーのおおまかな「あらすじ」を読んだ時、正直、ありきたりな設定だなあと思った。婚約者を殺された女医が、その犯人らしき美少年を疑いつつも、いつしか無実だと信じて行動をともにするという設定は、多少内容は違えども、どこかで読んだことがあるようにも感じた。しかしふたを開けてみれば、そんな思いは吹き飛んでしまった。どこかで読んだこれまでの作品では、けっして味わえなかった疾走感とじわじわと湧き上がってくる恐怖感にやられた。ありきたりのテーマでも味付け次第でこんなにも面白い作品になるのだと実感した。

ラストシーンの質がミステリーの良し悪しを決定するのだと実感

ネタバレになるので言えないが、とにかく中盤から、ラストシーンにかけての展開が秀逸すぎて、ひたすら脱帽である。読者が、たぶんこうだろうと予想する結末をあざわらうかのようだ。オセロゲームのように一瞬にして、白が黒に変わる瞬間が、ものすごいスピードで何度も繰り返されて、さっきまで白だと思っていたのに、もう黒だと信じ切っている自分にはっと気づかされる。主人公の秋穂にどっぷりと感情移入してしまい、読み終えた後は、しばらく現実に戻ってこれなかったほどである。それほど最高のラストシーンだ。

真夜中のマリオネットを読んでの感想やレビュー

本を読んだだけで、全力疾走したような気分にさせられたのは初めてだ。心の中で、何度も自分の信じることが白から黒に激しく移行し続けたせいなのだと思う。犯人かもしれないと疑われている少年のつかみどころのないキャラクターの描写もうまい。ラストシーンでそうだったのかと気づいた時には、同時進行していたもう一つの物語が浮かび上がってきて、心の中で秋穂と同じ行動をとろうと走り出していた。とにかく読んで、一人でも多くの人に、この思いを共有して欲しい。

真夜中のマリオネットがおすすめでない人

こんな人はおすすめしない

  • 売春などのワードに拒否反応のある人
  • ボーイズラブが苦手な人
  • 暴力シーンが苦手な人
  • この作者の作品の明るさが好きだという人
  • なし

基本的には、すべての人におすすめなのだが、しいて言えば「売春」「ボーイズラブ」「暴力」などのシーンが多少出てくるので、このようなシーンを一切受け付けないという潔癖な方には無理かもしれない。頻度的には、そう多くはないし、細かい描写もされておらず、エピソードとして多少使用されているだけの部分も多いので、ほとんどの方は気にならないと思う。また、知念さんの作品の中では、わりと暗めの内容なので、知念さんの作品の明るさが好きという人も、違った意味で衝撃をうけるかもしれない。

真夜中のマリオネットをおすすめしたい人

こんな人におすすめ

  • とにかく面白いミステリーが読みたい人。
  • ミステリーの著者にだまされてみたい人。
  • 「美少年」というキーワードをみて読んでみたいと思う人。
  • なし
  • なし

とにかく面白いミステリーを読んで、著者にだまされてみたい、または謎解きに挑戦してみたいという方にとっては、きっと、満足できる作品だと思う。彼が犯人なのか、犯人で無いのか、主人公の秋穂自身と一緒に解明し続けて、少年の魅力にはまって翻弄されていくような感覚になることもあれば、無実の少年を救うため悪い奴らから彼を守りたいという感覚になることもあり、常に読者自身心が揺れ動くのが、面白い。登場する少年が、主人公の秋穂でも心を奪われてしまうような美少年であることから、この「美少年」というキーワードにときめいてしまう方にもおすすめの作品だ。







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