ご紹介する本
総合
読みやすさ
学び
面白さ
この本から学べるポイント
- 1:ミステリーのネタは、まだまだ尽きない。
- 2:だまされてみたいという欲求を見事にかなえてくれる。
- 3:本当に面白いミステリーはどんなに難解で長編でも楽しめる。
香川県にお住いのペンネームひまわりさん55歳女性(職業:会社員・職員(非正規雇用)?)から2022年1月頃に読まれた蒼海館の殺人を読まれたレビューになります。
蒼海館の殺人の内容
高校生の田所は、依然巻き込まれた事件のせいで学校にこなくなった「名探偵」の葛城に会うために、友人の三谷と共に彼の実家「蒼海館」を訪ねる。彼らを出迎えてくれたのは、葛城の父で有能な政治家の父親、厳格な母親、人当たりがよく弟想いの兄、美しいが弟の葛城につらく当たるトップモデルの姉、陽気な葛城の叔母とその夫、家庭教師などの個性的な人々だった。そんな中、田所らは凄惨な殺人事件に巻き込まれる上、台風で逃げ場を失ってしまうという絶体絶命の状況に陥る。
蒼海館の殺人の著者について
著者:阿津川辰海
東京都出身の小説家。東京大学卒業後、2017年「名探偵は嘘をつかない」でデビューする。2019年に発表した「紅蓮館の殺人」と、その続編で2021年に発表した「蒼海館の殺人」は「このミステリーがすごい」に選出されている。
蒼海館の殺人のYouTube(ユーチューブ)
「蒼海館の殺人」についてYouTube(ユーチューブ)で紹介している動画がないか調べてみました。
「VTuber栞のミステリー小説カフェ」チャンネルで同じ著者の紅蓮館の殺人と共に非常に面白く紹介されているので是非一度ご覧ください。
蒼海館の殺人本の要約
この本から学べるポイント
- 1:ミステリーのネタは、まだまだ尽きない。
- 2:だまされてみたいという欲求を見事にかなえてくれる。
- 3:本当に面白いミステリーはどんなに難解で長編でも楽しめる。
台風の影響で徐々に水深が上昇し、逃げ場をなくしていくという最悪の状況下で、凄惨な殺人事件が起こる。「名探偵」の葛城に会うためにこの館、「蒼海館」を訪れた田所は、かつてあざやかに事件を解決した葛城の力をかりようとするが、以前の事件のせいで自暴自棄になった葛城に、その気力は無い。そんな中、現場に偶然、田所があまり快く思っていない実の兄までが登場し、それぞれの思いや過去のトラウマなどさまざまな感情が入り乱れる中、次の殺人事件が起こる。
ミステリーのネタは、まだまだ尽きない。
多くのミステリーで描かれてきた、陸の孤島、館での殺人事件。もうネタも尽きただろうと思っていたら、こんな手法があったのかと驚かされる。見事なトリックと、それを裏付ける数々の伏線、これまでいろんなミステリーを読んできた経験から、犯人とトリックを自分なりに予測していたのだが、それでもまったく予測できない結末だった。こんなすごいトリックを考えつく作者の頭の中は、いったいどうなっているのだろうと常々感じる。
だまされてみたいという欲求を見事にかなえてくれる。
だまされるものかと思いつつ、だまされてみると、いい本を読んだなという、ちょっと嬉しいような満足感と高揚感でいっぱいになる。一方で、見破れなかったという後悔と悔しさが入り混じったような複雑な気持ちにもなる。すべてのミステリー好きな読者が、この瞬間を味わうためにミステリーを手に取るのだと思う。本書は、この贅沢な瞬間を思う存分味合わせてくれる、まれな一冊である。「このミステリーがすごい」に選出されたのも納得である。
本当に面白いミステリーはどんなに難解で長編でも楽しめる。
本書は登場人物も多く、内容も難解である。そのため、表紙のあとには「主要登場人物」「本館見取り図」の他、親切にも「周辺図」や「家系図」まで表記されている。それでも理解力のない私は、何度もそれらを再確認し、頭の中を整理しながら読み進める必要があった。そんな苦労をしてでも最後まで読みたいと思わせてくれる面白さが、このミステリーにはある。また、主要な箇所には「現場の詳細図」も掲載してくれており、なかなか親切な一冊でもある。
蒼海館の殺人を読んでの感想やレビュー
読み終えた時に、やられたと感じるミステリーは多いけれども、「あっぱれだ、完敗だ」と思えるミステリーはそう多くはない。本書は、そう思える数少ない1冊である。読み進めるうちに知らぬ間に誘導され、惑わされて、はっと気が付いたら予想外の結末にたどりついていた、そんな感覚だ。著者には、ぜひ、この作品の続編も書いて欲しいと思う。そして、また新しい手法で、多くの読者を驚かせてほしい。また凄惨な殺人事件が取り扱われているにも関わらず、本書には家族愛に癒される場面も多々ある。いろんな要素が含まれた秀逸な作品である。
『蒼海館の殺人』阿津川辰海
前作の事件で受けたショックにより引きこもった葛城を気にかけ、田所は同級生と葛城家を訪れる。今回は水害+殺人事件。葛城が覚醒してからがとにかく凄い。あらゆる人があらゆることを誤解していて、とんでもなく入り組んだ事件。読んでいて思わず唸った。凄い#読了 pic.twitter.com/TDDL2pDyoK
— まり (@subrosa001) December 3, 2022
『蒼海館の殺人』阿津川辰海著。
紅蓮館から2ヶ月後。葛城家の館に集う華麗なる一族と訪問者。連続殺人と迫る洪水。偶然をも計画に組み込む真犯人の悪意と芸術性。次々とピースが嵌っていく怒涛の展開と伏線回収が秀逸!探偵観と自分の存在意義は…青臭くてもいい。明けない夜はないから。#寝読部 pic.twitter.com/5XXpXFUdwC
— ikep (@ikep72865553) October 9, 2021
『蒼海館の殺人』阿津川辰巳
蜘蛛の巣のように複雑に張り巡らされた罠にトリック。二転三転する真相に最後まで気が抜けませんでした。#読了 pic.twitter.com/JnbyLOvdFW— Ruby📚 (@ruby20221012) November 21, 2022
蒼海館の殺人がおすすめでない人
こんな人はおすすめしない
- 難解な設定の小説を読むのがめんどうだと感じる人
- 「館もの」「陸の孤島もの」のミステリーが、あまり好みでない人
- 「紅蓮館の殺人」をいまいちだと感じた人
- なし
- なし
「紅蓮館の殺人」に今一つ感銘できなかった人には、あまりおすすめできないかもしれません。また「紅蓮館の殺人」を読んでいない人には、登場人物の背景が分かりづらいため、できれば「紅蓮館の殺人」を読んでから、本書を手に取るべきだと思います。「館もの」「陸の孤島もの」の要素が満載なので、このタイプのミステリーが好みでない方には受け入れづらいでしょうし、難解なものが読みたくないと思う方にも不向きだと思います。ただ、最初にも述べたように、難解さを超える面白さが本書にはあります。
蒼海館の殺人をおすすめしたい人
こんな人におすすめ
- 上質なミステリーにだまされてみたい人
- 「館もの」「陸の孤島もの」のミステリーが好きな人
- 「紅蓮館の殺人」にはまった人、その続編が読みたいと思っている人
- なし
- なし
「紅蓮館の殺人」の続編なので、前作を読んで続きを読みたいと思っている方には、ぜひおすすめしたい一冊です。内容ももちろん、前作以上に満足できるものとなっています。また、「館もの」「陸の孤島もの」のミステリーが大好物な人にとっても垂涎の作品でしょう。怪しげな登場人物、複雑に絡み合う関係性、逃げ場のない館などなど、待ってましたと思わず叫んでしまうような状況設定にハマりまくること間違いありません。登場人物の感情表現もゆたかで、読みごたえがあり、小説自体に深みがあります。上質で難解なトリックにぜひ、挑んでみてください。