文学・評論

【本要約】琥珀の夏(著者: 辻村深月)の書評とポイント解説を総まとめ!

ご紹介する本

琥珀の夏

ジャンル: 文学・評論

著者: 辻村深月

出版社: 文藝春秋

発売日: 2021/6/9

本の長さ: 552ページ

8.7

総合

9

読みやすさ

9

学び

8

面白さ

この本から学べるポイント

  • 1:子供にとって本当に大切なことは何なのか。
  • 2:子供が常にどれだけ敏感に反応し傷ついているのか。
  • 3:どんな状況においても「救い」はあるのだということ。

香川県にお住いのペンネームひまわりさん55歳女性(職業:会社員・職員(非正規雇用)?)から2022年2月頃に読まれた琥珀の夏を読まれたレビューになります。

琥珀の夏のYouTube(ユーチューブ)


「琥珀の夏」についてYouTube(ユーチューブ)で紹介している動画がないか調べてみました。
「株式会社 文藝春秋」チャンネルで紹介されているので是非一度ご覧ください。

琥珀の夏の内容

近藤法子は40代前半の女性弁護士。同じく弁護士をしている夫と幼い娘の3人暮らしだが、目下の悩みは、今後の娘の保育園探しである。そんな平凡な日々をおくる法子の日常をざわつかせる事件が起こる。静岡県にある「ミライの学校」という場所から、子供の白骨死体が発見されたのだ。実は法子自身、30年以上前の夏休みの間だけとはいえ、その学校に通っていた時期があった。学校になじめず辛い思いをしていた自分に声をかけてくれたミカという少女の存在を思い出した時、法子は、いつしかその事件解明に巻き込まれていく。

琥珀の夏の著者について

著者:辻村深月
2004年「冷たい校舎の時は止まる」にて、第31回メフィスト賞を受賞し、デビューした。2012年には「鍵のない夢を見る』で、第147回直木三十五賞を受賞し、2018年には「かがみの孤城」で第15回本屋大賞も受賞している。

琥珀の夏本の要約

この本から学べるポイント

  • 1:子供にとって本当に大切なことは何なのか。
  • 2:子供が常にどれだけ敏感に反応し傷ついているのか。
  • 3:どんな状況においても「救い」はあるのだということ。

弁護士となった40代の女性、法子が、発見された白骨死体が、実は自分自身と友達だったミカという少女ではないかと疑いはじめることから、物語は始まります。その後、物語は、法子自身の30年前の回想と、ミカという少女の30年前の回想を交互に織り交ぜながら構成され、当時起こったことが何だったのかが徐々に明らかにされます。物語中盤で、さらに意外な事実が判明し、現代の法子自身がこの事件に大きく関わっていくことになります。

子供にとって本当に大切なことは何なのか。

これを読んだだけで語りつくせるような簡単なことではないとわかってはいるが、この本を読むと「これだけは違う、間違っている」というものがわかってくるような気がする。とくに怒涛のラストシーンでは、子供自身のどうしようもない心の叫びや悲鳴のようなものが、すごい勢いで伝わってきた。私たち大人は、一人の人間の人格、ひいては人生を決定するような重要な責任を常に負っているのだと、自覚せねばならない、そんな気分にさせられる。

子供が常にどれだけ敏感に反応し傷ついているのか。

この本では、あらゆる場面での子供たちの心の動きがとても丁寧に詳細に描かれている。どちらかといえば子供の頃、敏感で引っ込み思案だった私自身、読んでいて、彼女たちの気持ちが分かりすぎて、胸が苦しくなったほどだ。大人からみれば、本当に些細なことで、彼らは、信じられないほど落ち込んで、考えられないような行動を起こしてしまう。そんな敏感で傷つきやすい子供たちにもっと寄り添える教育現場が存在して欲しいと思う。

どんな状況においても「救い」はあるのだということ。

主人公自身、けっして完璧な人物ではなく、日々、苦悩し、落ち込み、迷い、時には自分の子供にすら八つ当たりしてしまう。でも、だからこそ、相手の気持ちを理解できることに気づき、前を向いて歩きだそうとする。そのリアルな内容に、暗闇で一筋の光を見つけ出したような気分になった。けっして、明るい話ではないが、それだけに読み終えた後に深い感動が押し寄せてきて、どんな状況においても「救い」はあるのだと、改めて心から思える、そんな作品だ。

琥珀の夏を読んでの感想やレビュー

読み終えた後、じんわりと心の中に「大切なもの」が広がっていくような、これまでの読書では味わえなかった、達成感のようなものを感じました。私自身があまりみたくなかった、封印していたとも思える、私自身の子供の頃の嫌な記憶を掘り起こしたあと、それを主人公たちが「でも大丈夫だよ」導いてくれたように感じたからなのかもしれません。ちょっと読むのがしんどいと思った瞬間もありましたが、出会うことができて良かった1冊だったと思います。

琥珀の夏がおすすめでない人

こんな人はおすすめしない

  • 子供時代にいじめなどの辛い過去をおくっていた方
  • 子供が苦手、関心がないという方。
  • 重い内容が苦手で、ひたすら明るい小説が読みたいという方
  • なし
  • なし

子供時代に辛い過去があった方は読んでいてやりきれない気持ちになることがあるかもしれません。ただ、直接的に虐待などが描かれているわけではないので、もしかして読むことでより越えられる場合もあると思いますので、一概には言えません。内容自体は、けっして悲観的ではなく、希望がみられるのですが、全体的には重い内容なので、明るい爽快感のある小説を求めている方にも不向きだと思います。ただ、重い内容を乗り越えた上での希望あるラストシーンには、明るいだけの小説とは違う、まぶしさのような感覚があることも知っていただけると嬉しいです。

琥珀の夏をおすすめしたい人

こんな人におすすめ

  • 教育の現場や子供に関わっている方たち
  • 子供の頃、引っ込み思案で敏感だった人たち
  • すべての子供たちに幸せになって欲しいと願う人たち
  • なし
  • なし

この本を読むことで、昔の自分をみているような気分になった方は、きっと敏感で傷つきやすい、どちらかといえば引っ込み思案な子供だったのだと思います。どうしてあんな些細なことで、あれだけ悩んだのだろうと大人になった今なら、笑い話に出来ますが、あの頃は真剣に悩んでいたはずです。今、自分のまわりに同じような子供がいたら、どうか少しだけ、救いの手を差し伸べてあげて欲しいと思います。そして「わかってくれる大人がいる」「助けてくれる大人がいる」ということを言葉ではなく、身をもって子供たちに感じて欲しいと思います。







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