ご紹介する本
総合
読みやすさ
学び
面白さ
この本から学べるポイント
- 1:「ホラー」というジャンルの可能性。
- 2:ヒューマンドラマの要素を取り入れたホラーは、より恐怖が濃厚になる。
- 3:スティーブン・キングの物凄い才能
富山県にお住いのペンネームにゃんちゅうさん44歳女性(職業:会社員・職員(非正規雇用)?)から2021年9月頃に読まれた「ペット・セマタリー」を読まれたレビューになります。
「ペット・セマタリー」の内容
スティーブン・キングの代表作の一つであるホラー。引っ越してきた家族が見舞われる壮絶な不幸。この不幸は家族愛の裏返しになっているので、余計に恐ろしい。その地域には不思議な土地があり、ペットの墓になっていた。そこに死んだペットを埋めると蘇ってくると言われている。主人公の家族のペットも死んでしまうが、娘を悲しませたくなくてペットをその土地に埋めてしまった。すると、死んだはずのペットが蘇って戻ってきたけれど、臭いにおいや、性質が変わったり、不気味になってしまった。ある時、小さな息子が交通事故で亡くなってしまった。ついにその息子の亡骸を、その土地に埋めてしまった。息子は蘇ってきたが、その性質はもはや、あの無邪気な彼ではなかった。
「ペット・セマタリー」の著者について
著者:スティーブン・キング
アメリカの有名なホラー小説家。スタンド・バイ・ミーや、キャリーのほか、シャイニング、ITなど、映画化されてヒットした作品が多数ある。
「ペット・セマタリー」本の要約
この本から学べるポイント
- 1:「ホラー」というジャンルの可能性。
- 2:ヒューマンドラマの要素を取り入れたホラーは、より恐怖が濃厚になる。
- 3:スティーブン・キングの物凄い才能
ペット・セマタリーという呪われた土地の話で、そこに生き物の亡骸を埋葬すると蘇ってくる。けれど、まるでゾンビか悪魔のような性質に変わってしまっていて、姿かたちはそのままでも、中身は別のものに入れ替わっているという恐怖が克明に描かれている。この物語では、埋葬する対象が、愛する家族が亡くなり、耐え切れずにその亡骸をペット・セマタリーに埋葬してしまう、どうなるか予想しているはずなのに、という、悲しみと背中合わせの恐怖が味わえる。
「ホラー」というジャンルの可能性。
ただ怖いだけ、不気味なだけではなく、人間の心の揺れ動きを考えさせられる。分かっているのにやってしまう、しかも、どんな怖いことが待ち受けているのか予想できるはずなのに、というポイントが恐怖の鍵になっている。読者はそれを予想する。主人公も本当は分かっているはずなのに、足を踏み入れてしまう。そうせずにはいられない理由があって、読み手の方も、「ああ、わかる。自分もそうしてしまうかもしれない」と納得しながら恐怖を味わうことができた。
ヒューマンドラマの要素を取り入れたホラーは、より恐怖が濃厚になる。
ホラーは、ただ怖いだけ、不気味なだけでは現実味がなくて、読んでも記憶に残らない。その場限りの恐怖で終わってしまう。けれどもこの作品は、ヒューマンドラマの要素が濃厚で、文学的な表現も鮮やかである。そういった深いものが出汁のように効いて、「ペット・セマタリー」という作品スープの味わいを作り出している。作品スープの具材は、恐怖が近づきつつある予感や、実際に作中で起きている事象などだ。これらが、読み進めるほどにじわじわとしみ込んできて恐怖が迫ってくる。
スティーブン・キングの物凄い才能
スティーブン・キングは大好きな作家のひとりである。このごろ彼にはまっており、ここ半年ほど、ずっとスティーブン・キングばかり購入しては読んでいる。「ペット・セマタリー」は、ずいぶん前に古い映画をDVDで見ただけだった。その映画があまり良いものではないように感じていたので、そのまま原作を読まないままになっていた。改めて原作を読んで見て、実はすごい作品だったことが分かった。これは、映画で描き切れないくらい深くて切ないホラーだと思った。
「ペット・セマタリー」を読んでの感想やレビュー
本当に、読んでよかったと思う。ずいぶん前に映画を見て、これは面白くないなと思い込んでしまったのが悔やまれる。また、これほど、映画と原作が「似て非なるもの」になっている作品は珍しいかもしれない。映画は決して、原作に不忠実であるわけではなく、だいたいの部分はそのままだと思われる。なのに、なぜ映画を見て面白く感じられなかったのだろうかと思う。映像化するのが難しい部分があるのかもしれない。原作を読んで心から良かったと思うし、そういう作品に出合えて幸運だと思う。
「ペット・セマタリー」がおすすめでない人
こんな人はおすすめしない
- あっさりした怪談好きな人
- 短編やショートショートが好きな人
- ラノベが好きな人
- 外国人の作家の作品が好きじゃない人
- 官能的な表現が駄目な人
「ペット・セマタリー」はあっさりした怪談ではない。ちょっとくどいくらい怖い。また、けっこう長いので(上下巻)短編やショートショートをさくっと読みたいタイプの方には荷が重い作品だと思う。また、海外の作品が苦手な方にも勧めない。スティーブン・キングはアメリカの方だし、表現もアメリカ的だから。性的な表現が苦手な人も受け入れがたいかもしれない。なぜなら、作中でセクシーな表現や場面がけっこう出てくるので。これはキングの作品全般に言えることではある。
「ペット・セマタリー」をおすすめしたい人
こんな人におすすめ
- ヒューマンドラマが好きな人
- 濃厚なホラーが好きな人
- スティーブン・キングの作品で、「シャイニング」や「IT」しか知らない人
- 犬、猫を飼育したことがある人
- ただ怖いだけの話に飽きている人
ヒューマンドラマ好きで、濃厚な読み応えあるホラーが好きで、ただ怖いだけの話に飽きているような人にはスティーブン・キングは持ってこいの作家だと思う。中でも「ペット・セマタリー」は心にぐさぐさくるので本当にオススメ。犬や猫を飼育したことがあり、亡くした悲しみを知る人が読んだら、作中の人の気持ちが分かると思う。また、ITやシャイニングといった超有名な作品しか知らない、しかも映画でしか知らないような方がこの作品を読んだら、多分、本当にスティーブン・キングにはまると思う。