文学・評論

【本要約】100分de名著 堕落論 (著者: 大久保喬樹)の書評とポイント解説を総まとめ!

ご紹介する本

100分de名著 堕落論 2016年7月

ジャンル: 文学・評論

著者: 大久保喬樹

出版社: 新潮社

発売日: 2000/5/30

本の長さ: ???

9.7

総合

9

読みやすさ

10

学び

10

面白さ

この本から学べるポイント

  • 1:美を求めない所に美が宿る
  • 2:善は気楽な道であり、堕落者こそが救われる
  • 3:自分の庭の続く先にある大自然の存在を考える

神奈川県にお住いのペンネームtakeshiさん36歳男性(職業:会社員・職員(非正規雇用)から2022年2月頃に読まれた100分de名著 堕落論 2016年7月を読まれたレビューになります。

100分de名著 堕落論 2016年7月の内容

"「堕落論」は、坂口安吾が、人間は堕落する事によって、本来の人生を歩む事ができると説く一冊です。本書は、それを説明した本ですが、ここで使われている堕落とは、行き過ぎた高潔な精神から人間の身の丈に合った精神へと軌道修正する事で、生きやすい人生を歩もうではないか、という事であり、堕落とは言っても実際は、過ごしやすい思想を模索する本となっています。

しかし、安吾は、そのような堕落も困難であり、人間は永遠に堕ち抜く事はできないだろう、と述べています。なぜなら、人間は可憐であり脆弱であり、愚かであるから、堕ち抜くためには弱すぎる、というのです。そして、何らかの人間性を高めるカラクリをつくり出して、(例えば武士道のような精神)それに頼らざるを得ないだろう、と指摘します。人間の善意を確信しているのです。

このような思想に興味を覚える方なら、本書は楽しむ事ができるのではないか、と思いました。"

100分de名著 堕落論 2016年7月の著者について

著者:大久保喬樹
1946年に生まれた大学教授です。東京大学の大学院に進学し、パリ第3大学で比較文学を専攻、文芸評論を書きながら、大学で教授職を務めました。1989年には評論「岡倉天心」にて第1回和辻哲郎文化賞を受賞するなど、確かな実力と実績を残してきた人物です。

100分de名著 堕落論 2016年7月本の要約

この本から学べるポイント

  • 1:美を求めない所に美が宿る
  • 2:善は気楽な道であり、堕落者こそが救われる
  • 3:自分の庭の続く先にある大自然の存在を考える

"安吾は、終戦を迎えて、人々がこれからどのような生き方をしていったら良いのか、という時に、武士道などの精神からの転換を主張しました。本書には、そのような思想が随所に見受けられます。

著者は、それと同様に、現在の日本も、どのような方向に向かっていけばよいのか見えにくくなっている、と指摘しています。その時、安吾の思想が参考になるのではないか、と著者は言います。

個人的には、生き方に迷った時は、仏教的な大自然と一体化した心の平穏を求める思想が魅力的だと思います。何かに熱心に取り組みたい方は、これこそ自分の求めていたものだ、と声に出して叫びたくなるような高みまで、研鑽を積み重ね、日々切磋琢磨し、本を読みふけり、運動に疲れ果て、それでもまだまだ頑張るその先に何があるのか、確かめてみるのも良いかもしれません。

本書には、このような生き方についてのひとつの考え方が提示されていると思います。"

美を求めない所に美が宿る

"安吾は、暮らしに根差さない文化は意味がないと述べています。暮らしの必要に貫かれた文化こそが健康な文化なのだ、と語ります。

そこで、小菅刑務所とドライアイス工場、入り江に浮かぶ軍艦が最も美しいと主張しました。そこには、美を求めるための作為がひとつもなく、必要性のみが考慮されていて、それ自身に似る外には、他の何物にも似ていないのである、そうして、ここに、何物にも似ない3つのものが出来上がった、と言います。

美を求めない事で、逆に美が生まれるというこのような考えには、なかなか面白い部分があり、自己を主張しない無虚飾性の中には、確かに魅力があると思います。そして、これは柳宗悦氏が、雑器という実用性を目的とする生活雑貨に美を見い出した境地に通じるものがあり、美という作為のない所に美が生まれるというこれらの思想には、ある程度の説得力がありますし、面白いと思いました。"

善は気楽な道であり、堕落者こそが救われる

"また、安吾は、義理や約束事を守っていればそれで良い、という意味で、善人は気楽なものだと主張します。堕落者は、常にそこからはみ出して、ただ一人荒野を歩いて行くのであり、その方が大変だと述べています。そのような孤独こそ神に通じる道であり、「善人なおもて往生をとぐ、いはんや悪人をや」という親鸞聖人の思想がそこに表れている、と喝破、この道は天国に通じている、と述べています。

普通に考えれば逆でしょう。義理や約束事を守る事の方が難しいですし、そこから解放されている堕落の状態の方が気楽です。しかし、義理や約束は、正しい道として定まっているため、目標として設定しやすく簡単ですし、常にそれ以外の道を模索しなければならない堕落の方が難しい、と言われれば、そうかもしれない、と思ってしまう所が、安吾の凄い所だと思います。

悪人の道が険しければ、それこそ神の救済がある、そこを通らざるを得ない人こそ往生する、と言われると、どこか納得してしまうような説得力があり、このあたりのカラクリは、よく出来ていると思います。

しかし、それに惑わされては駄目で、やはり、義理や約束事を重視する事を考える方が正常でしょう。個人的には、安吾の思想によって、逆に義理や約束の大切さに気付かされた部分があると思いますし、そこに学ぶべきものがあると思います。"

自分の庭の続く先にある大自然の存在を考える

"安吾は芭蕉の存在にも言及しています。芭蕉は、庭を出て、大自然の中に自家の庭を見い出し、庭を作った、と言います。彼の人生が旅を愛したばかりでなく、彼の俳句自体が、庭的なものを出て、大自然に庭を作った、という事ができる、と述べています。

安吾は、芭蕉について、自分の家の庭だけが庭なのではなく、日本全体に庭を見い出し、大きなスケールで自分の所属する範囲をとらえた、と解釈します。

確かに、自分の家という小さな部分に留まっていては、もっと大きな部分である日本社会が見えてきません。そして、自分もその一員であり一部なのだ、と気付けば、そこにある自然も自分の庭となり、また、自然と一体化できるのではないか、と思います。

仏教的な価値観として、自然と一体化する事を尊ぶ思想がありますが、自分の庭を自然という領域まで押し広めて考えた安吾の思想には、そのような大きな安らぎと穏やかさが表れており、その点、優れていると思いました。

自分が、自分がという自我だけに留まっているだけではなく、自我と自然の溶けあう境地に達すれば、そこに、絶え間ない無限の安らぎがあるような気がします。安吾の思想の中には、そのような領域の話が含まれていると思いました。"

100分de名著 堕落論 2016年7月を読んでの感想やレビュー

"安吾は、どんなに立派な庭を作ろうとしても、自然にはかなわないと言います。確かに、小川の流れる森林の静けさや、海の果てしない青さは人間には作り出せないものです。そして、そのかなわないという諦めが、日本では無きに如かざる、すなわち無に及ぶものは何もない、と考える精神として尊ばれてきた、と述べています。

しかし、個人的には、かなわないからこそ、そこに挑む人間の偉大さに価値があるのであり、研鑽の末の到達点として、無はあると思います。例えば、日々料理を作っている主婦の包丁さばきが美しいように、自動化されて作為のない無が体現されているシーンは、日常にもあると思います。そして、そこに到達するためには繰り返しと研鑽が必要であり、その果てに自然は宿ると思います。

私は、そのレベルには達していないのですが、柳生宗矩は五十有余の時に、自在に剣を振るう事が出来るようになった、と述べていますし、ピカソは、晩年に「ようやく子どものような絵が描けるようになった。ここまで来るのにずいぶん時間がかかったものだ」と述べていて、自由自在に絵を描ける領域に達した事を述べています。

達人や天才の言葉は、理解しかねる部分がありますが、個人的には、そこにはなんらかの無の領域が開けているような気がします。
この本を読んで、そのような自然を体現するような状態を実現できたらいいな、と思いましたし、そういった領域を目指したいと思いました。"

100分de名著 堕落論 2016年7月がおすすめでない人

こんな人はおすすめしない

  • ひねくれた考えが好きではない方
  • 武士道が好きな方
  • 精神的に向上していく事を求めている方
  • 無作為の中に美があるとは思えない方
  • 自分の生き方に特に不満はない、という方

"まず、安吾の主張はかなり独特なので、今まで述べてきたような事柄と調子が合わない方には、おすすめできないかもしれません。また、武士道などの長年育まれてきた日本文化を否定しているので、武士道などが好きな方はいい気がしない部分があると思います。

この他にも、堕落を標榜しているので、精神的な向上を求める方は、肩透かしをくうでしょうし、無作為の中にこそ美があると言われても、仏教建築や都心の摩天楼、尾形光琳のきらびやかな絵画や、洗練されたデザインの数々に魅力がないか、と言われると、どうしても頷けない部分があり、そのような点で説得力がないかもしれません。
個人的には、無作為の中に飾らない美を見い出す事はありますが、美の本質は作為的に魂を込めて作られた物にもあると思うので、どちらか一方に限定するのは正しくないと思いました。

また、堕落論は、生き方の指南書ですので、自分の生き方に不満はないという方には、特に必要のないものかもしれません。"

100分de名著 堕落論 2016年7月をおすすめしたい人

こんな人におすすめ

  • 武士道が好きになれない方
  • 気楽に生きたい方
  • 独特な解釈を展開する哲学に興味がある方
  • ひねくれた考えが好きな方
  • 何気ない日常にこそ大切なものがあると思う方

"まず、安吾は、戦争中に流行した武士道や貞節といった概念を否定しており、そのような価値観が好きになれない方は、安吾と気が合うかもしれません。また、堕落論は、肩ひじ張らずに生きていこう、というスタンスなので、気楽に生きる事が好きな方にも相性が良いのではないか、と思います。

また、安吾は徹底的に堕落しなければならない、そこにこそ救いがある、という論を展開しており、そのような独特な解釈に魅力を覚える方には、本書は面白いかもしれません。

この他にも、安吾は、作為のない必要性の中にこそ美が生まれる、と述べており、何気ない日常の中に美があるかもしれないと思うような方には、頷きたくなる部分があると思います。

安吾の主張には、片寄った部分がありますが、上記のような項目が面白いと思えるなら、一読の価値があると思います。"







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