文学・評論

【本要約】神様のカルテ(著者: 夏川草介)の書評とポイント解説を総まとめ!

ご紹介する本

神様のカルテ

ジャンル: 文学・評論

著者: 夏川草介

出版社: 小学館

発売日: 2011/6/7

本の長さ: 256ページ

9.3

総合

9

読みやすさ

9

学び

10

面白さ

この本から学べるポイント

  • 1:何を人生の重要とするか
  • 2:夏目漱石の影響力
  • 3:医療現場のひっ迫さ

大阪府にお住いのペンネームこうせつさん34歳男性(職業:会社員・職員(正規雇用)?)から2021年11月頃に読まれた神様のカルテを読まれたレビューになります。

神様のカルテの内容

病院に勤務する主人公「栗原一止(くりはらいちと)」を中心に巻き起こる、人の生と死、そして喜怒哀楽にフォーカスした作品となっています。
主人公は内科医でありながら、病院の方針(24時間365日対応!)により慢性的な人手不足から、専門外の医療診療対応も請け負っています。また夜勤当直勤務のまま通常業務に入ることも珍しくないようで、3日寝ないことも日常茶飯事。
主人公の客観的な評判は「変人」。当小説は一人称形式で進んでいくのですが、本人曰く夏目漱石の草枕を愛読書とし、一人称の口調も時代がかった臭い言い回しとなっています。読み始めはそれに違和感やチープさを感じるのですが……それ以上に主人公の医療に対する熱さを感じずにはいられません。

神様のカルテの著者について

著者:夏川草介
1978年生まれ。
小説家兼医師。当作品は医師として勤務かたわら2009年に書き上げられたデビュー作(第10回小学館文庫小説賞を受賞)となります。
(第7回本屋大賞候補作にも選ばれています)

神様のカルテ本の要約

この本から学べるポイント

  • 1:何を人生の重要とするか
  • 2:夏目漱石の影響力
  • 3:医療現場のひっ迫さ

日々多忙な、という言葉では済まない時間を過ごす主人公ーー「栗原一止(くりはらいちと)」は、毒づきながらも診療の手を抜くことはしなかった。それは彼の性分でもあるし、患者へ向き合う彼なりのスタンスだったのだと思う。
「24時間365日」を謳う地方病院に勤める一止には最近、大学病院の医局から熱心な誘いがある。医局行きを勧める友人や上司。彼自身も先端医療に興味が無いわけではない。医局という立場に抵抗があるだけで、彼の心は大きく揺れる。
そんな中、末期のガン患者で入院をしている安曇さんにフォーカスされる。彼女は優しいおばあちゃんという感じでいつも腰が低く人気者だったが「手遅れ」の患者だった。
手遅れの患者を拒否する大学病院。手遅れであったとしても患者と向き合う地方病院。
主人公の歩む道は自ずと定まっていった。

何を人生の重要とするか

人生は選択の連続です。その場その場で求められる事に目が向きがちで、数年先を考えることは容易ではありません。
主人公も3日間家に帰れないことはザラの生活を送っている地方病院勤めです。そんな彼に大学病院の医局勤めの打診がかかります。
大学病院では、大人数で、エビデンスをもって、チームで取り組む事が出来、彼にとっても患者にとってもマストな環境のように思えました。
しかし、彼の理念にあった「患者との向き合い方」とは齟齬があるように感じていました。
自分への負担をかけてまで理念を追い求める姿に共感と尊敬が出来る主人公であると思えます。

夏目漱石の影響力

当作品は夏目漱石に関することがちりばめられています。明治時代の文豪なのに未だ強い影響力があるという事は凄いことですね。
時々出てくる作品名は元より、当作品の登場人物のほとんどは「あだ名」で統一されています。(例外は主人公と妻)
そうです「坊ちゃん」と同じなんです。登場人物の体格や性質を表す言葉として「あだ名」呼びに統一されているため、細かな人物描写が無くてもすんなりと受け入れられるというのも当作品のポイント、および夏目漱石の偉大さであると思えます。

医療現場のひっ迫さ

ほとんどの方が医師とはプライベートの接点のない生活を送られていると思います。むしろイメージでは、ちょっとした診断で稼ぐ高給取り、といった感じでしょうか。
当作品の主人公はそれとはかけ離れており、当直から仮眠をとれないまま通常勤務・専門外の医療担当、さらには共同のボロ屋敷に住んでいます。
どれだけ疲れていても患者は来ます。重症な方から軽傷な方まで笑
大学病院ならともかく、地方病院は人員も限られるためオールマイティなポジションが求められるのだろうとはいえ、これがフィクションでないのなら問題ですね。(ただし作者は医者で、実際に勤めていた病院を舞台に小説を書かれています)

神様のカルテを読んでの感想やレビュー

当作品は公表につきシリーズ化されています。(1~3巻、0巻、新章)
その映えある第一作目となる当作品は、作者による熱い想いが存分に感じられるものになっています。
生と死、という本来重いテーマではありますが、読了後はどこか清涼な後味となるのは作者の人柄によるものでしょう。常に死に向き合い、どのように看取るか、区切りをつけるか、は実現場の課題でもあります。
決して流れ作業にならず、一人ひとりに向き合う主人公の姿は、一人の人間として尊敬に値します!

神様のカルテがおすすめでない人

こんな人はおすすめしない

  • 小学生
  • 40代
  • 50代
  • 60代
  • 70代

読んでいただいて一向に構わないのですが、一人称の語り口が「軽く」感じる事もあり、ある種の鬱陶しさを感じるのではないかと危惧します。
それがこの作品の売りではあるのでしょうが、いわゆる若者のノリのため、一定程度の年代の方に受け入れられるか私には自信がありません(賞を取っているくらいですから杞憂でしょうが)
また小学生でも理解はできるでしょうが、人の生死に関わる主題を含んでいますので、もう少し成長されてから拝読された方が受け取り方・見方も異なってくるのではないかと思います。

神様のカルテをおすすめしたい人

こんな人におすすめ

  • 学生
  • 新社会人
  • 会社員
  • 主婦
  • 入院されている方

個人的には、比較的若い方に読んでいただきたい作品のように思えます。
第一に主人公自体が若い事。若い故の考え方、取り組み方というのは必ずあります。自らのスタンスが完成する前に「こういう考え方もある」というのを知る上で、当作品を読んでいただきたいですね。
第二に一人称の語り口で読みやすい。主観で文章が進んでいくため、地の文は描写よりも心理を強く描かれておりサクサク進めることが出来ます。主人公の口調は回りくどいですが、描写はあっさりしています。







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