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この本から学べるポイント
- 1:非行少年たちは世の中すべてが歪んで見えているのかもしれないという事実
- 2:非行少年には共通点があり、大人に障害やハンディがあることを気づかれなかった子どもたちであること
- 3:褒める教育では解決にならないこと
青森県にお住いのペンネームNAKAさん25歳女性(職業:その他)から2021年10月頃に読まれたケーキの切れない非行少年たちを読まれたレビューになります。
ケーキの切れない非行少年たちの内容
ニュースで理解不能な事件を起こし、「なぜこのような事件を起こすのか?」という疑問を私たちに持たせるような非行少年たち。著者は、彼らが「反省をすること」以前に、物事を客観的に捉えたり後先を考えて行動したりすることができない「認知のゆがみ」を持った少年ばかりであることに気づく。「①認知機能の弱さ」「②感情統制の弱さ」「③融通の利かなさ」「④不適切な自己評価」「⑤対人スキルの乏しさ」「⑥身体的不器用さ」を持つ子どもたちのSOSサインに、周りの大人がいかに気づいて救ってあげられるかが教育、そして社会を変えていく。
ケーキの切れない非行少年たちの著者について
著者:宮口幸治
医学博士、臨床心理士でもあり、また児童精神科医として少年院などにいる多くの子どもたちと向き合ってきた。
ケーキの切れない非行少年たち本の要約
この本から学べるポイント
- 1:非行少年たちは世の中すべてが歪んで見えているのかもしれないという事実
- 2:非行少年には共通点があり、大人に障害やハンディがあることを気づかれなかった子どもたちであること
- 3:褒める教育では解決にならないこと
"・非行少年には「認知機能の弱さ」「感情統制の弱さ」「融通の利かなさ」「不適切な自己評価」「対人スキルの乏しさ」+「身体的不器用さ」の共通する【5点セット+1】がある。
・ケーキを3等分できない非行少年たちは、計画が立てられず未来の見通しがもてない。そのため悪事に対する葛藤すら生まれず、殺人を犯すなど悪事を起こしてからようやく人を殺してしまったという事実に向き合うことになる。
・褒められる教育は問題解決にはならないだけでなく、下手をするとその子を悪化させる可能性がある。"
非行少年たちは世の中すべてが歪んで見えているのかもしれないという事実
著者が医療少年院で勤務したての頃、最も手がかかる子に対しRey複雑図形の模写という課題をさせてみたところ、彼が書いたのは見本とはかけ離れた図。これは単純に「写すのが苦手かどうか」という問題ではなく、「世の中全てが歪んで見えている可能性がある」ということ。見る力が弱いということは聞く力も弱いのではないか?→つまり、周りが言っていることも歪んで聞こえているのではないか?→世の中の全てのものが歪んで認知しているのではないか?ということ。私たちが理解不能だと思っていることや常識だと考えていることが、もしかしたら彼らにとっては正しいように見えているのかもしれないということに気づかされた。
非行少年には共通点があり、大人に障害やハンディがあることを気づかれなかった子どもたちであること
事件を起こす非行少年たちは劣悪な家庭環境や貧困などが原因でそのような行動をとってしまったのだろうか、とニュースを見るたび思っていた。しかしそういうケースの子どもたちだけではなく、非行少年には「認知機能の弱さ」「感情統制の弱さ」「融通の利かなさ」「不適切な自己評価」「対人スキルの乏しさ」+「身体的不器用さ」という5つ+1の共通点を持っているということを知った。これは普段の生活では意識して関わらなければ気づかれないようなポイントばかりで自分自身も学童指導員として働いていたころ認知が難しかったところでもある。このようなサインが出始めるのが小学校2年生、周りがいかに気づいてあげられるか、そしてサポートして良い方向へ導いてあげられるかが大切である。
褒める教育では解決にならないこと
「褒める教育」というものが一時期言われていたが、それは果たして本当にいい教育と言えるのかを考えさせられた。褒めるだけでは、子どもたちも慣れてきてしまう。勉強や運動、生活態度が苦手な子どもも褒めなければいけないとなると、彼らがすでに知っていることや世の中で褒められるまでもない程度のことまで褒めることになる。少年院の非行少年にも「僕は褒められて伸びるタイプなのに」と発言した人がいるそうだが褒められて育った結果が悪事を働かせて少年院に入るということになってしまっては意味がない。教育の方法は色々あるが非行少年にとっては「認知させること」が重要なのかもしれないと学んだ。
ケーキの切れない非行少年たちを読んでの感想やレビュー
「ケーキの切れない非行少年たち」というタイトルを聞いたとき、正直どういうことなのか理解ができなかった。ナイフで切るという行為自体が難しいのか、ぐちゃぐちゃにしてしまうのか...。その時点で、自分自身も知らずに「ケーキが普通に切れる普通の人」と「ケーキすら切れない変な人」という考えをしてしまっていたように思う。私自身、学童指導員の教室長として勤務したことがある。どんな方法で指導しても反発してくる少年や他の生徒とは集団行動がとれない少年など、様々な子どもに接してきた中でどうやって指導したらこの子たちをよい方向に導けるかということで悩んでいた。その最中でこの本を読んで、彼ら(全員ではないと思うが)の思考を垣間見ることができた。私たちからすると理解不能なことも、彼らの思考を見るとこう見えて、こう聞こえているのかもしれない、じゃあこうしてみようと自分自身の行動を変えることができた。すべての教育者、親、人に関わる人はこの本を読んでほしいと思う。そして世の中には「普通」はないということに気付いてほしい。
ケーキの切れない非行少年たちがおすすめでない人
こんな人はおすすめしない
- 自分の意見が絶対だと思う人
- 人を許せない人
- 事件の背景を考える力がない人
- 多角的に物事を捉えられない人
- 教育に全く関心がない人
「非行少年=完全な悪者」と考える人と、「非行少年が悪事を起こしたのには理由や背景がある」と考える人がいる。前者はその人をただの悪い人という一つの見方しかできないが、後者は人や物事を多角的に捉える力があると思う。その力で健常者、普通という言葉とは逆の立場にいる人たちの思考や行動を考えていくと、非行少年たちも別の見方で考えることができると思う。前者の考えにとらわれてそこに眠る事実に気づけない人は読んでも効果がないのではと思う。
ケーキの切れない非行少年たちをおすすめしたい人
こんな人におすすめ
- 教育に携わるすべての人
- 子どもを持つすべての親
- 企業の部下を持つすべての人
- ニュースをみて「なぜこのような事件を起こすのか理解不可能」と思うすべての人
- ニュースをみて「なぜこのような事件を起こすのか理解不可能」と思うすべての人
1日の中で多くの時間を過ごすことになる学校では子どもたちがサインを出しやすい場でもあると考えるため、教師や学童指導員など教育に携わる教育者はこの本の内容を絶対に心得なければいけないと思う。また、子どもをもつ親は事前に知識として知っておくことで子どもたちのサインを早期発見できるし、企業で人に関わる全ての人も知っておくことで部下のちょっとおかしい、ということにも気付ける場となる。また今まで非行少年に対する偏見や攻撃的態度をとっていた人たちもこの内容を知ると見方が変わってくるのではないかと思う。