ご紹介する本
総合
読みやすさ
学び
面白さ
この本から学べるポイント
- 1:単行本の良さ
- 2:青春の儚さ
- 3:現実の厳しさ
愛知県にお住いのペンネームアニーさん25歳男性(職業:その他)から2021年10月頃に読まれた犬がいた季節を読まれたレビューになります。
犬がいた季節の内容
学校にやってきた子犬のコーシローを取り巻く人間関係を、コーシローの目線と各章の主人公目線で描いた作品。基本短編小説となっており、前話で登場した主人公は二話では脇役として出てくるのも珍しくはない。犬のコーシローは人の気持ちがわかり、登場人物達のアシストをしてくれる。舞台は三重県四日市市にある高等学校。そこに子犬のコーシローが紛れ込み、人間の光子郎と出会うところから始まる。色んな主人公を交えて行われる青春群青劇。
犬がいた季節の著者について
著者:伊吹有喜
2009年に「風待ちの人」でデビュー。2014年には「ミッドナイト・バス」で第27回山本周五郎賞候補、2017年「彼方の友へ」で第158回直木三十五賞候補、そして2021年に「犬がいた季節」で第34回山本周五郎賞候補を獲得している。
犬がいた季節本の要約
この本から学べるポイント
- 1:単行本の良さ
- 2:青春の儚さ
- 3:現実の厳しさ
それぞれの年代から見た犬のコーシロー、それを取り巻く人間群青劇。それが短編集となり、繋がり一つの物語を形成している。見所は短編集ならではの、繋がるところだ。前話で主人公だった人物が、次の話では脇役、または主人公を支える立場として描かれている。また時代毎に、背景が異なり、読者に様々な場面を連想させてくれる。話が進むにつれ子犬だったコーシローは成犬へ。高校生だった登場人物は大人へ。物語が移れゆく様を一緒に体験できる。
単行本の良さ
近年紙媒体の需要は激減している。その理由に一番あげられるのが、やはり電子書籍の出現だろう。紙とは違い、保管場所を取らず、好きな時に読め、好きな時に購入できる。実際利点だけで見れば、紙媒体は電子書籍には勝てない。しかし本書は単行本の魅力を全部注ぎ込んだ作品となっている。物語を全て読み、ふと気づく。表紙をめくり裏表紙も見てみる。これをした者は単行本の魅力に改めて気づいてくれるだろう。ネタバレになってしまうので詳しくは言えないが。本書は単行本で読んでいただきたい。
青春の儚さ
当時高校生活を早く終えて大人になりたいと思った学生は多いはずだ。本書でもそれを思った人物が出てくる。彼女は自分の夢と理想の為に体を売り、お金を稼ぐ。そんな彼女を周りは大人と見た。しかし主人公だけは違った。そこから繰り広げられる青春劇は忘れていた感情を思い出させてくれた。危うげで、酸っぱく、恥ずかしい思い出。しかしあの時間は大人になったら二度と落とすれない時間。綺麗な青春だけではない。黒いものをある。しかしそれらを青春と呼ぶ。
現実の厳しさ
小説は筆者の妄想であり、空想である。だから無理やりハッピーエンドにしたって誰も文句を言えない。それに読者は思い入れのある登場人物程幸せになってほしいと願うものだ。しかし本書は、容赦無く現実を登場人物に背負わせる。第一章で主人公の女の子は、歳をとるにつれ人生の苦難に立たされる。それは現実世界でも起こりうることだが、何も空想の世界でやらなくてもいい気もする。しかし著者はキャラにそれを背負わせることで、乗り越える力を付けさせている。魅せ方の一つだと思う。
犬がいた季節を読んでの感想やレビュー
本書を読み終えて、単行本の表紙を見たとき鳥肌が立った。それほどの演出だった。正直単行本は高い。自分は最新作を読みたい!わけではないので、文庫本でもいいと思っている。しかし本書が単行本の魅力を作品丸々使って、私に教えてくれた。それからは文庫本は一切買っていない。例え出版されていようが、わざわざ単行本を探して読んでいる程だ。もちろん仕掛けはネタバレになってしまうので、控えさせていただくがとにかく読んだ後に見ていただきたい。
犬がいた季節がおすすめでない人
こんな人はおすすめしない
- 主婦
- 女性
- 経営者
- 大学生
- 働いている人
五つの共通する点は時間がなさそうだからだ。大学生は時間があると思われがちだが、バイトや遊びで忙しい。本書を読むならじっくりと焦らず読んでいただきたい。そうしないと魅力は半減してしまう。またその他の経営者や働いている人もそうだ。仕事にもよるが、とにかく読むのであれば時間をかけて、じっくりと読んでいただきたい。経営者は読まなくてもいい。彼らが学べることは何もないし、彼らは小説から学ぼうなんて一ミリも思っていないから。
犬がいた季節をおすすめしたい人
こんな人におすすめ
- 学生
- 社会人
- 年寄り
- 男性
- 教師
まず学生、特に中学生には読んで欲しい。義務教育が終わり、さぁ今から人生の選択の時。しかし誰もが思い出してほしい。中学生の時人生のことなどこれっぽちも考えていなかった。しかし本書を読めば、自分のやりたいことをやる強さ、現実の厳しさをしることができるだろう。そこから自分なりに答えを導き出して欲しい。次に教師はぜひ読んで頂きたい。作品には理想の教師が出てくる。その人物を知ってどう思うかは本人次第だが、考え方は少なくとも変わると思う。