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刀伊の入寇
ジャンル: SpecialPick, 文庫・新書・ノベルス
著者: 関幸彦
出版社: 中央公論新社
発売日: 2021/8/18
本の長さ: 189ページ
この本から学べるポイント
- 1:藤原北家という名門に生まれながら、その強直な性格から平安王朝から遠ざけられていた藤原隆家が、ひとたび活躍の場を与えられると獅子奮迅の働きをしており、人には適正というものがあるのがわかりました。
- 2:刀伊の入寇以前に、新羅の海賊が日本近海を襲撃しているにもかかわらず、平安王朝は何の対策もしていないことで、前もって対策することで犠牲を減らせたかもしれないのです。
- 3:藤原隆家と武者の奮闘で刀伊を撃退できましたが、日本側にも多くの死傷者が出ていることで戦いは勝っても負けても犠牲者が出ることです。
兵庫県にお住いのペンネームよしおさん65歳男性(職業:経営者・個人事業主(自営業))から2022年1月頃に読まれた刀伊の入寇を読まれたレビューになります。以下からKindleや中古で購入できるので興味がある方は是非見てみてください
刀伊の入寇の内容
摂政関白として権力をほしいままにした藤原道長の全盛期だった平安時代中期の1019年、突如として対馬壱岐、北九州に大陸から謎の海賊が現れ、住民を襲撃し略奪や殺戮を
繰り返した事件について詳しく説明した書籍です。事件は刀伊の入寇と呼ばれていて、刀伊とは大陸の沿海州付近で活動して女真族のことで、刀伊は1019年3月、50隻に船団
を組んで現れた。この国家的危機に対して大宰府にいた藤原道長の甥の藤原隆家が、北九州の武者を率いて奮闘した顛末が述べられています。
刀伊の入寇の著者について
著者:関幸彦学習院大学文学部を卒業後、学習院大学大学院に進学のあと満期退学し、学習院大学助手、日本大学教授などをへて現在日本大学特任教授となっています。専門は日本中世史です。
Youtube
刀伊の入寇刀伊の入寇 (アンドロメダアンドロメダ 刀伊の入寇版)
刀伊の入寇本の要約
この本から学べるポイント
- 1:藤原北家という名門に生まれながら、その強直な性格から平安王朝から遠ざけられていた藤原隆家が、ひとたび活躍の場を与えられると獅子奮迅の働きをしており、人には適正というものがあるのがわかりました。
- 2:刀伊の入寇以前に、新羅の海賊が日本近海を襲撃しているにもかかわらず、平安王朝は何の対策もしていないことで、前もって対策することで犠牲を減らせたかもしれないのです。
- 3:藤原隆家と武者の奮闘で刀伊を撃退できましたが、日本側にも多くの死傷者が出ていることで戦いは勝っても負けても犠牲者が出ることです。
あまり知られていない元寇以前に、日本が外敵に攻められた刀伊の入寇がなぜ起きたか、当時の東アジアの国際情勢と平安朝の危機感のなさや藤原道長の甥で藤原北家の名門
に生まれながら、乱暴者で大宰府に左遷された隆家が日本の危機を救ったのです。隆家は眼病を患うなど不運が続きますが、降ってわいたような刀伊の侵略に対してこれを
撃退すべく司令官に抜擢されます。隆家は北九州の武者を率いて外敵と戦いますが、当時はまだ武家の時代ではなく、この事件で武者が奮闘したことで後の武家の時代につながったいえます。
藤原北家という名門に生まれながら、その強直な性格から平安王朝から遠ざけられていた藤原隆家が、ひとたび活躍の場を与えられると獅子奮迅の働きをしており、人には適正というものがあるのがわかりました。
鎌倉時代や戦国時代と違い、平和で優雅な時代のように思っていた平安時代に、外国からの侵略があったことに驚いたのと、外敵を撃退したのが軟弱のように見えた貴族の
一員である藤原隆家であったことです。日本は島国で外敵の侵略がしにくいようにみえますが、この刀伊の侵略やそれ以前の新羅の海賊、鎌倉時代の元寇と繰り返し外敵か
ら攻撃されているのので、平和時から情報収集に力を入れて、防備を固めることが平和を維持するのに大切だと知りました。
刀伊の入寇以前に、新羅の海賊が日本近海を襲撃しているにもかかわらず、平安王朝は何の対策もしていないことで、前もって対策することで犠牲を減らせたかもしれないのです。
5刀伊の来襲に対しても平安王朝は、右往左往するだけで周辺の寺社に祈願するなど何ら具体的な対抗策をとっておらず、大宰府の隆家や九州の武者にまかせっきりで無責任な
態度にあきれ、これは最近の北朝鮮ミサイルの日本政府の頼りない対応に共通するものがあるといえます。そして結局は現場のものに頼り、地位のあるものは何もしないとい
う日本の弱点がこのころから現れているのがわかり、時代が変わっても人間の本質は変わらないのがわかりました。
藤原隆家と武者の奮闘で刀伊を撃退できましたが、日本側にも多くの死傷者が出ていることで戦いは勝っても負けても犠牲者が出ることです。
6刀伊の来襲以前に、何度も新羅の海賊が日本近海に出没して被害を受けているのに、平安王朝はなんら対策をとっておらず、刀伊は日本を侵略する前に高麗を荒らしまわって
います。そのため次は日本が襲撃されることを予想できたにも関わらず平安王朝は情報収集もせず、高麗と連携して刀伊を撃退するなどの外交努力も行っていないのです。
日本は外交と情報は3流といわれていますが、昨日今日始まったことではなく、昔からその傾向があったのです。
刀伊の入寇を読んでの感想やレビュー
1000年前にも日本を揺るがすような大事件が起きていたこと、当時は律令制が崩壊し藤原道長の摂関政治の全盛期で、東アジア全体の政治の秩序の乱れがあり、その間隙を
縫って北方民族の女真族である刀伊が日本を侵略したことを知り驚きました。また国家の兵隊に代わり民間の兵隊である武者が台頭し、その武者が後で権力を握り武家政権を
作ったことにつながったことなどを学ぶことができました。また刀伊を撃退したのが、のちの元寇でも活躍した九州の武者であったこともわかりました。
刀伊の入寇がおすすめでない人
こんな人はおすすめしない
- 学者が書いた本なので、エンタメ要素を期待する人には向いてないです。
- 歴史に興味がない人。
- じっくり読む本なので、速読したい方には向いてないです。
- なし
- なし
日本史は日本人なら自国のことなので、みんなが学ぶべきですがやはり興味がない方もおられるので無理やり読んでも面白くないと思います。しかしテレビや映画などで歴史もの
などを見慣れてくるとこういうあまり知られてない事件にも、興味がわいてくると思います。また文章がやや硬く感じる方もいると思いますので、コミックを読むような感じでは
読むのは難しいです。じっくり歴史を研究したい方におすすめの本なので、そうでない方にはあまりおすすめしないです。
刀伊の入寇をおすすめしたい人
こんな人におすすめ
- 日本史に興味がある方や研究している人におすすめ。
- 外交安全保障に興味がある方。
- 東アジアの国際情勢に興味がある方。
- なし
- なし
日本史で優雅なイメージしかない平安時代も、国家的危機があったことや貴族から武士の時代に代わる象徴的な事件を詳しく説明していることです。また当時の東アジアは
大唐帝国が滅亡した後で混沌とした情勢の中で、秩序の乱れがありそういった国際情勢の激変はこれからも起こりえるので、国際政治を見るのに役立ちます。また律令制が
崩壊し王朝時代へ移った当時の日本で海防を担うのを、民間の兵士である武者に頼ったことが、武士に台頭につながったことなどを学ぶことができました。やはり歴史に
学ぶことは大切で、過去の出来事は現代にも通じ未来を見通すヒントになります。