文学・評論

【本要約】推し、燃ゆ(著者: 宇佐見りん)の書評とポイント解説を総まとめ!

ご紹介する本

推し、燃ゆ

ジャンル: 文学・評論

著者: 宇佐見りん

出版社: 河出書房新社

発売日: ‎2020/9/10

本の長さ: 144ページ

7.3

総合

7

読みやすさ

7

学び

8

面白さ

この本から学べるポイント

  • 1:自尊心の依拠するところについて自身で明確に理解しておくこと。
  • 2:自尊心の根拠を他人に任せすぎないこと。
  • 3:没頭することで現実から目を背けることが出来るのはせいぜいモラトリアム期の若者だけということ。

東京都にお住いのペンネームきょんこさんさん28歳女性(職業:会社員・職員(正規雇用)?)から2021年8月頃に読まれた推し、燃ゆを読まれたレビューになります。

推し、燃ゆの内容

学校でも家庭でもうまくいっていない女子高生あかりが主人公です。そのあかりが人生の生きがいとしているのが8歳年上の男性アイドル、真幸を推すこと、つまりファン活動すること。そんなある日、真幸がファンを殴るというショッキングな事件が起こり、炎上してしまいます。その後のあかりについて、内面の描写を中心に物語は進んでいきます。現代を生きる十代の青春、世相、そして普遍的な自尊心について描かれており、実際にありそうなひとつの現実から一人の女子高生をフォーカスし、見事に描ききった芸術作品ともいえそうな小説です。

推し、燃ゆの著者について

著者:宇佐見りん
デビュー作『かか』で第56回文藝賞受賞、第33回三島賞を当時最年少で受賞。期待の純文学の新星。当該作品『推し、燃ゆ』にて芥川賞受賞。21歳での受賞は歴代三番目の若さ。

推し、燃ゆ本の要約

この本から学べるポイント

  • 1:自尊心の依拠するところについて自身で明確に理解しておくこと。
  • 2:自尊心の根拠を他人に任せすぎないこと。
  • 3:没頭することで現実から目を背けることが出来るのはせいぜいモラトリアム期の若者だけということ。

主人公は学校にも家庭にも居場所がないと感じている女子高生あかり。あかりの推しは男性アイドルの真幸で、真幸を推すことがあかりの人生の生きがいだった。ある時、真幸がファンを殴って炎上する。あかりは推しを推すことで人生に意味や価値を見いだしていた。推しが推せなくなる、その現実を前に、推しに没頭することで見ないようにしていた自分のリアルに向き合わざるをえなくなる。成人前の最後のモラトリアムを生きる、現代の女の子のお話。

自尊心の依拠するところについて自身で明確に理解しておくこと。

自尊心の依拠するところについて、自身で明確に理解せず、曖昧にしていると、いざ依拠するものが揺らいだ時に動揺するばかりで早急に立て直すことが困難になるからです。自尊心の根底が他人にあるのか、自分にあるのか、またどのようなことなのか、言語化した上で事前に理解しておくことが必要なことだと思いました。なぜ言語化が必要かというと、あいまいなものを言語化することできちんと具体化され、論理的に考えることに役立ちます。

自尊心の根拠を他人に任せすぎないこと。

自尊心の根拠を他人に任せすぎないことについてですが、本書では主人公あかりは他人である男性アイドル真幸を推すという行為で自尊心を保っています。具体的には、真幸という人物を解釈し、推すというファン活動にお金をかけることで、自分の価値を確かめています。そして真幸の推し活動以外に夢中になっていたり、励んでいたりするものはありません。そうすると真幸という他人の存在が揺らいだ時に自身の自尊心全てがゆらぐことになります。

没頭することで現実から目を背けることが出来るのはせいぜいモラトリアム期の若者だけということ。

没頭することで現実から目を背けることが出来るのはせいぜいモラトリアム期の若者だけということについてですが、逆に若者にしかできないことかもしれないという逆説もありえます。主人公あかりの姿を通して推し活動の熱を学びましたが、歳をとると馬鹿正直にひとつの事に夢中になることが難しくなります。周囲の環境がそうさせてくれないというのもあるでしょうし、心が成熟するにつれ、いろいろなブレーキを無意識に欠けることで自分の存在が揺らがないようにしているのだと思います。その逆説も踏まえた上で、愚かな行為を愚かだと認識しつつも行えるのはせいぜいモラトリアム期までだと学びました。

推し、燃ゆを読んでの感想やレビュー

私自身オタクとして歴が長く、推しが居続ける人生であったのでそもそも共感性が高く、またアラサーになって心が成熟しきった今読むと、その推しを推す熱さが若々しく、青く、懐かしく、そしてまた羨ましく感じられ、爽やかな読後感と共にたいへんな満足感を得られる読書体験となりました。文体が軽やかなので最後まで一気に読めたのもよかったです。まるでSNSをやっているような気軽さで、人間の自尊心のあり方についてという普遍的なテーマに近づける作品であり、宇佐見りんさんの作品はこれが初めてでしたが、今後も注目したい作家さんになりました。

推し、燃ゆがおすすめでない人

こんな人はおすすめしない

  • 推しがいた事がない人
  • オタクに対してマイナスな感情を持っている人
  • きちんと生活できない人に対してマイナスな感情を持っている人
  • SNSをやっていない人
  • 頑張ってない人に対してマイナスな感情を持っている人

推しがいず、SNSもあまり使っていないとなると一体何の話か?とそもそも話の前提のところが分からず、読み進めても意味がわからないまま終わるかなと思いました。また、SNSをやっていたとしても、推しが人生でできたことのない人には共感できないまま一冊が終わってしまうと思うので、あまり楽しめないかなと思います。それと主人公のあかりは推し活動にだけ邁進して、自身の生活や未来について目を背けがち、まさしく逃避している最中なので、そういう描写にイライラする人にも向かないかと思います。

推し、燃ゆをおすすめしたい人

こんな人におすすめ

  • 学生
  • 推しがいる人
  • 推し活動に不安や悩みがある人
  • 自分に自信がない人
  • 軽く純文学を読みたい人

推し活動をしている学生さんであれば、主人公であるあかりと立場が似通っているので、頷くようなシーンも数多くあると思います。また程度に差はあれど、推すという行為についても同じベクトルを持っているはずなので物語の本質に触れやすいかと思います。他には自尊心について描かれていること、読後感が爽やかなこと、そして文体が軽めで読みやすいことから、自分に自信のない人や軽く純文学に触れてみたい人におすすめできると思いました。







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