ご紹介する本
総合
読みやすさ
学び
実用性
この本から学べるポイント
- 1:悪意が無い事で全てが許される訳ではない
- 2:主観的な物事の見方だけでは、人の気持ちはわからない
- 3:読まず嫌いは損をしている事がある
岡山県にお住いのペンネームゆぴょんさん45歳女性(職業:専業主婦(主夫)?)から2021年8月頃に読まれた烏に単は似合わないを読まれたレビューになります。
烏に単は似合わないの内容
どこか日本の平安王朝を思わせる世界観の中で繰り広げられる、異世界ファンタジー。八咫烏(やたがらす)に変身出来る人間たちが権力を持ち支配する世界で、宗家世継ぎの若宮の后選びのため、姫君たちが宮廷に集められる。宗家の下の東西南北それぞれ4家の姫君が、それぞれの家の権力争いや恋心によって、壮絶なバトルを繰り広げる事になる。そんな中侍女の失踪事件など不可解な事件も次々と起こり、物語は更に緊張感を増していく。ラストには衝撃の結末を目にする事となる。
烏に単は似合わないの著者について
著者:阿部智里
「烏に単は似合わない」で、弱冠20歳にして2012年に松本清張賞を受賞。それ以降「八咫烏シリーズ」を代表作とする。
烏に単は似合わない本の要約
この本から学べるポイント
- 1:悪意が無い事で全てが許される訳ではない
- 2:主観的な物事の見方だけでは、人の気持ちはわからない
- 3:読まず嫌いは損をしている事がある
宮廷ファンタジー+ミステリーの怪作。始めは后選びのために集められた4人の姫君の中の一人、あせびが語り手として物語は進んで行きます。純粋無垢で外見も可愛らしいあせびは他の姫君のアクの強さに圧倒されがちですが、よくある宮廷ファンタジーと侮る事なかれ。ラストまで読み進める事によって、驚きの展開を目にすることとなります。人間の持つ悪意をこのような手法で描いた作品はなかなか無いでしょう。ミステリー小説としても十分な読み応えがあり、読後には自分自身の行動や、それに伴う人との関わり方など色々な事を考えさせてくれる作品です。
悪意が無い事で全てが許される訳ではない
重大なネタバレになってしまいますが、語り手の姫君あせびが繰り広げられる宮廷バトルの中起こる、不可解な事件を引き起こす主犯であった事が判明します。あせび自身にはあくまで「悪意」は無く無邪気に言った言葉などが、彼女を慕う人たちを動かし、事件を起こしてしまっていたのです。謎解き後、若宮があせびに言った、悪意無く行動するからといって許されると思っている人間を許す事は出来ないという様なセリフがストーリーのキモとなっていると思います。
主観的な物事の見方だけでは、人の気持ちはわからない
これも重大なネタバレになってしまいますが、あせびが語り手で進むストーリー展開で、彼女を主人公と捉えて読んでいた場合の見え方と、ラストで明かされた真実を知った後で読む物語は、まるで見え方が違ってくる事にゾッとさせられました。実生活でもよく起こりうる事であり、必ず自分が正しいと思って行動する事で、知らず知らずに人を傷つけてしまう事もあると改めて感じました。また一方の言い分だけ聞いて、判断する事の怖さも感じました。
読まず嫌いは損をしている事がある
普段は現代や近未来が設定でのリアルなミステリ小説が好きなので、ファンタジー要素のある作風や時代設定の古い作品はほとんど読む事が無いのですが、想像以上にミステリーとして骨太であると聞き読んでみて本当に良かったです。口コミ紹介などで噂を知らなかったら、ほぼ手にとる事は無い系統の作品だったのに、読んでみて全く印象と違っていたので、何事も決めつけは良くないなと思いました。読書の幅を狭めず、色々なチャレンジをする事で新しい出会いがある事を学びました。
烏に単は似合わないを読んでの感想やレビュー
普段手にとる事のない宮廷ファンタジー小説ですが、驚きのラストという口コミの評判を聞いて、読んでみて本当に良かったです。宮廷ファンタジー初心者だからこそ、設定や世界観にどっぷりハマりこんで最後までページをめくる手が止まりませんでした。他のこういう系統の作品にも興味が出たので、新しい扉を開けてくれたきっかけの1冊になりそうです。ラストまで読んで、評判通りの驚きの展開に真夏にもかかわらず背筋がゾクっとする感覚を味わいました。「八咫烏シリーズ」の続編も面白かったので、これから少しずつ読み進めていくのが楽しみです。
烏に単は似合わないがおすすめでない人
こんな人はおすすめしない
- ミステリーにファンタジー要素を絡めて欲しく無い方
- 勧善懲悪のストーリー展開が好きな方
- カタルシスを感じられるような、スッキリした後味の物語が好きな方
- 人間同士のドロドロした展開が苦手な方
- 純粋なファンタジー作品しか求めていない方
この作品の宮廷ファンタジーとミステリー、という特徴がそれぞれが純粋に好きな方には、どっちかつかずな印象で物足りなく感じる事もあるかもしれないと感じました。また最後は勧善懲悪のスッキリ爽快感のある終わり方とは決して言えず、なんとも後味の悪い作品ではあるので、そういう作風が苦手な方にはオススメ出来ません。途中の陰謀や策略も結構ドロドロしているので、そういうストーリーが苦手な方にも不向きであると感じました。
烏に単は似合わないをおすすめしたい人
こんな人におすすめ
- イヤミス的な作風が好きな方
- 宮廷ドラマが好きな方
- 女のドロドロが好きな方
- ファンタジー小説が好きな方
- 意外な結末のストーリーが好きな方
ファンタジー小説としても緻密な設定でありながらも、硬派なミステリー小説としての要素が非常に強く、ミステリ読みでも十分な内容であると感じました。また后選びの宮廷バトルの様相は、女のドロドロや人間同士の思惑のぶつかりあいなどもハラハラしながら楽しめる要素となっています。そして極力、なんの情報も持たずに読んだ方が良いかとは思いますが、ラストではどんでん返し的な驚きも得られるので、その様な小説な好きな方にもオススメしたいです。