ご紹介する本
総合
読みやすさ
学び
面白さ
この本から学べるポイント
- 1:明快な仕掛けと鮮やかな種明かし
- 2:シリーズものとして、キャラクターを長く追っていける面白さ
- 3:作中に散りばめられた数学的・哲学的表現
大阪府にお住いのペンネームさとりさん36歳女性(職業:その他)から2021年11月頃に読まれたすべてがFになる THE PERFECT INSIDERを読まれたレビューになります。
すべてがFになる THE PERFECT INSIDERの内容
妃真加島という孤島にあるハイテク研究所で、幼い頃に起こした事件により、以降ずっと外部とは完全に隔離された状態で生活してきた天才工学博士・真賀田四季。
大学のゼミ旅行でこの島を訪れていたN大学工学部建築学科助教授・犀川創平と、同学部の1年生・西之園萌絵は、真賀田四季が密室状態であったはずの彼女の部屋から、両手両足を切断され、さらにウェディング・ドレスを身にまとった死体の状態で現れるのを目撃。
犀川と萌絵はこの不可思議な密室殺人の謎を解明しようと試みる。
すべてがFになる THE PERFECT INSIDERの著者について
著者:森博嗣
愛知県生まれ。某国立大学に工学部助教授として勤める傍ら、「すべてがFになる」にて1996年に小説家としてデビュー。以降、小説のみならずエッセイや絵本など、幅広いジャンルの多数の本を書き上げている。
すべてがFになる THE PERFECT INSIDER本の要約
この本から学べるポイント
- 1:明快な仕掛けと鮮やかな種明かし
- 2:シリーズものとして、キャラクターを長く追っていける面白さ
- 3:作中に散りばめられた数学的・哲学的表現
多作な作家、森博嗣の小説家としてのデビュー作。第1回メフィスト賞の受賞作であり、新しい形の本格ミステリィの登場と謳われた。
デビューした1996年当時、一般的にはまだあまり広く耳馴染みのあるものではなかったであろう、コンピュータ用語や概念などが作中には多く登場し、いわゆる「理系ミステリィ」と評されている。
登場人物の犀川創平と西之園萌絵は本作以降も活躍し、それらは主に「S&Mシリーズ」と呼ばれている。
明快な仕掛けと鮮やかな種明かし
なんといってもジャンルとしては「ミステリィ」なので、物語の主軸にあるのは「謎」と「謎解き」です。
本作は、それらを盛り込んだ上でのストーリー展開が非常にテンポよく、描写もまるで映像作品を目にしているかのような明快さがあって、読者自身がそれぞれでイメージを膨らませた上で読み進めていくことができます。
そのため、謎の解決にも、そして物語の結末にも、十分な納得感をもって満足することができる作品だと思います。
シリーズものとして、キャラクターを長く追っていける面白さ
本作は「S&Mシリーズ」と呼ばれており、これは主要登場人物である犀川創平と西之園萌絵の名前に由来しています。
シリーズと名の付く通り、彼らは本作以降の作品にも登場し、毎回見事な活躍を見せてくれるのですが、それらを追っていくという楽しみがあります。
シリーズが進む中で、月日は流れ、キャラクターたちの立場や考え方、関係性なども徐々に変わっていきます。そういった変化を楽しむことができるのも、こういったシリーズ作品の醍醐味でしょう。
作中に散りばめられた数学的・哲学的表現
「理系ミステリィ」と評されるだけあって、物語の中ではコンピュータ用語や数学的概念といった、いわゆる「理系的」な用語・思想が多数登場します。
これは本作に限ったことではなく、以降のシリーズも、そして森博嗣作品全体に言えることかもしれません。
それらは、別に特別に解説がある訳でもなく、作中にごく自然な様子で登場するのですが、その使われ方が非常に秀逸です。特にメインとなるトリック周りは見事です。
そして登場人物もやはり理系の人間が多いのですが、彼らが交わす会話の中には、どこか哲学的な表現が混じっており、ハッとさせられることもしばしばあります。
すべてがFになる THE PERFECT INSIDERを読んでの感想やレビュー
本作はシリーズものの第1作ですが、夢中になって最後まで一気に読み通し、そして以降の作品も続けてまとめ読みしました。
それほど、作中の世界に没頭させてくれる、非常に魅力のある物語だと思います。
多数登場する理系的概念なども非常に興味深く、元々知っているものも含め、より詳しく学んでみたいと知的好奇心・探求心を見事に刺激してくれました。
この本に出合って、そして心から楽しむことができて本当によかった、と高い満足感を与えてくれました。
すべてがFになる THE PERFECT INSIDERがおすすめでない人
こんな人はおすすめしない
- 耳慣れない理系的用語・概念に拒否感を持ってしまう人
- 一冊の中ですべての謎が解決してほしいと望む人
- あまり長い話が得意ではない人
- 登場人物が多い話が苦手な人
- 詩的な表現を好まない人
まず「理系ミステリィ」と評されるくらいなので、理系的な用語や概念が、特別な解説もなく多数登場します。中には耳慣れないものもあるかもしれませんが、それらを毛嫌いしてしまうような人にはあまり向かないでしょう。
また、感じ方にも差はありますが、本作は決して短編ではありません。ある程度の長さをもった物語であり、また以降のシリーズではさらに長い話もあります。そういった長い話を読むのが苦手な人、また登場人物が多数入り乱れる話を苦手に感じる人にもおすすめはできません。
さらに、作中には詩的ともいえる表現が多く盛り込まれています。そういった表現・描写を好まない人にもあまり向かないと思われます。
すべてがFになる THE PERFECT INSIDERをおすすめしたい人
こんな人におすすめ
- 鮮やかに展開されていく謎解きの物語を楽しみたい人
- 好きなキャラクターの活躍を長く楽しみたい人
- 大学を舞台にしたストーリーを楽しみたい・大学生活を垣間見たい人
- シリーズを通しての壮大な仕掛け・伏線を楽しみたい人
- 理系の基礎的な知識がある、もしくは興味がある人
なんといっても「理系ミステリィ」です。謎解きが好きな人はもとより、そこにさらに理系的な用語・概念に明るい人であれば、より深く楽しめるでしょう。
また登場人物の大半は大学関係者であり、彼らがどういった環境で、日々何を研究しているのか、といった日常を垣間見ることができます。
そしてシリーズものの醍醐味でもありますが、随所に散りばめられた仕掛けや伏線の数々が、次第に線と線でつながっていく様は見事で、読み進めていく内に一種のカタルシス的経験を味わうことができます。