ご紹介する本
総合
読みやすさ
学び
面白さ
この本から学べるポイント
- 1:利己主義の克服
- 2:地球家族の理念
- 3:宗教の独善性の克服
埼玉県にお住いのペンネームやっとこさん53歳男性(職業:会社員・職員(正規雇用)?)から2021年10月頃に読まれた回勅 兄弟の皆さんを読まれたレビューになります。
回勅 兄弟の皆さんの内容
ローマ・カトリック教会のヒエラルキーの頂点である教皇が、イスラームの指導者との交流から刺激を得て書かれた回勅です。貧しい人や隅に追いやられている人と、わたしたちはどのように連帯し、互いに地球家族の一員として未来を築いていくための理念、そして実際的な提言が述べられています。この回勅の執筆中に新型コロナウイルスのパンデミックが図らずも起き、それは、教皇が人類の連帯についてあらためて世に問う機会となり、そのことも色濃く表れています。パンデミック前を取り戻すのではなく、この苦難を、新たな未来を構築するチャンスとしようというメッセージは、大変力強いものです。
回勅 兄弟の皆さんの著者について
著者:教皇フランシスコ
第266代のローマ教皇。初のアメリカ大陸出身の教皇です。庶民派の教皇として、信者のみならず世界中で熱烈に愛されています。旧態依然とした教皇庁の改革を進める強い意志をもっています。2019年11月に来日を果たしました。
回勅 兄弟の皆さん本の要約
この本から学べるポイント
- 1:利己主義の克服
- 2:地球家族の理念
- 3:宗教の独善性の克服
世界は今、悲しくも分断しています。それは利己主義によるものです。利己主義は、個人だけでなく、国、民族、宗教などにも存在します。この利己主義を克服し、世界中の人々が、国籍や宗教といった属性を超えて真に連帯するための、理念と具体的な提言が述べられています。連帯のために「ゆるす」ことの重要性が訴えられていますが、それと同時に、戦争その他による悲惨な歴史を「忘れない」ことの意義も説かれています。「ゆるす、だが忘れない」、これは文中で最も力強く述べられる主張です。
利己主義の克服
教皇が糸口にしているのは、福音書にある「よいサマリア人」のたとえ話です。追剥にやられ、傷ついて道端に倒れている人がいます。大祭司などがそのそばを通りますが、だれも彼を助けようとしません。彼を助けたのは、当時のユダヤ社会では賤しい存在として差別されていたサマリア人でした。サマリア人は傷ついた人の隣人となったのです。だれが自分にとって隣人なのかと問うのではなく、自分が困っている人の隣人になる、この価値の転換が重要です。
地球家族の理念
グローバル化が進む世でありながら、新たなナショナリズムが台頭する、そうした矛盾した状況が現代です。国境を越えて盛んに活動が展開している中で、そのことがかえって国境の思想を強めています。これは、国の利己主義です。おんぼろの舟に乗って大海を渡ろうとし、波にのまれて死んでいく、多くの移民がいます。戦火により住む場所を奪われた人が、命をかけて新天地を求めているのです。なぜそんな悲劇が存在するのでしょうか。この悲劇の克服には、人類家族の理念を共有する以外ありません。地球の民は一つの家族です。
宗教の独善性の克服
カトリック教会も歴史の中で、独善的な姿勢を取っていたことがあります。戦争を容認したこともあります。そのことを真摯に反省しなければなりません。まず自分たちの過去を振り返り、反省し、そして直すべきものは直す、そうした行動がまず求められます。そのうえで、宗教的信条によって暴力が肯定されることは、いっさいあってはならないのだというメッセージを強く発信すべきです。宗教によるテロリズムなどは、この世から一掃しなければなりません。
回勅 兄弟の皆さんを読んでの感想やレビュー
教皇フランシスコの三つ目の回勅になりますが、まだ現役教皇であるとはいえ、この回勅には、フランシスコ教皇の集大成といってもよいようなものを感じました。今までの公文書で述べられてきたさまざまな訴えが、一つの有機的なつながりを得て繰り返されています。その根本にあるのは「連帯」です。世界平和も環境問題も、グローバル化が進んだ現代社会にとっては、「連帯」なしには実現できないものです。先進国の蓄財によって後進国がいっそう不幸になっていく、そうした負の連鎖を、連帯によって克服しなければなりません。
回勅 兄弟の皆さんがおすすめでない人
こんな人はおすすめしない
- 考えることが嫌いな人
- すぐに反発する人
- 不真面目な人
- 理解を拒む人
- 無気力な人
正直に言えば、あらゆる人、腹黒い政治家も、無気力な若者も、利己主義の塊のような人にも、ぜひ読んでいただきたいと強く思います。しかし、何かしら答えざるを得なかったので、上のような回答になりました。教皇フランシスコは、決して上から押し付けるような物言いはしません。だからこそ、多くの人に愛され、ロックスター教皇などとも呼ばれているのです。ですからむしろ、教皇の姿勢とは真っ向から対立する人にこそ読んでほしい一冊です。
回勅 兄弟の皆さんをおすすめしたい人
こんな人におすすめ
- 原理主義者
- 宗教に関心がある人
- 宗教に懐疑的な人
- コロナ禍で苦しんでいる人
- クリスチャン
ローマ・カトリック教会のヒエラルキーの頂点が、イスラームの指導者との交流から得た刺激によって書かれた回勅であるという点が重要です。この書籍の巻末にも収められていますが、グランド・イマーム、アフマド・アル・タイーブ師と教皇フランシスコは、文書「世界平和と共生のための人類の兄弟愛」に共同署名しています。それは、宗教の利己主義を克服する理念の、鮮やかな提唱です。ですから、宗教に肯定的な人にも懐疑的な人にも、どちらにも読んでほしいと思います。