人文・思想

【本要約】愛するということ(著者: エーリッヒ・フロム)の書評とポイント解説を総まとめ!

ご紹介する本

愛するということ

ジャンル: 人文・思想

著者: エーリッヒ・フロム

出版社: 紀伊國屋書店

発売日: 1991/3/25

本の長さ: 216ページ

9.3

総合

9

読みやすさ

9

学び

10

面白さ

この本から学べるポイント

  • 1:愛は対象ではなく、技術の問題である。
  • 2:恋愛も経済的になっている。
  • 3:排他的な愛情は愛情ではない。

埼玉県にお住いのペンネーム読み書きちゃんさん19歳男性(職業:学生?)から2021年3月頃に読まれた愛するということを読まれたレビューになります。

愛するということの内容

生きる誰もが一度は考えたことのある愛について、社会心理学的な観点から取り扱った、哲学的な内容です。
文量はそれほど多くありませんが、全体を通して卓越した思索の成果が見事にまとめられています。

まず愛情の種類- 友愛上で/恋愛/自己愛/家族愛/神に対する愛-が挙げられていて、それらに対する考察が大部分を占めています。
そうした愛の種類について説明した後、現代社会における愛情の形や、人を愛するためにはどのような取り組みを行えばよいのか。
という提示が、比較的短い範囲で語られています。

愛するということの著者について

著者:エーリッヒ・フロム
1900年代に活躍したドイツ生まれのユダヤ人。
社会心理学/精神分析/哲学の場面でも成果を残し、新フロイト派とされた。
ナチスから逃れるためにアメリカに亡命した後、彼の代表作である「自由からの逃走」が刊行された。

愛するということ本の要約

この本から学べるポイント

  • 1:愛は対象ではなく、技術の問題である。
  • 2:恋愛も経済的になっている。
  • 3:排他的な愛情は愛情ではない。

人々が追い求めている愛情とは、対象の問題ではなく、技術の問題であるという立場をとった主張が展開されています。
つまり、しかるべき時期に、自分に見合った相手が現れてくれれば、あとは愛情を育んでいける。という誤解を指摘しています。

また、人々は自分が愛されることに関心があり、いかにすれば相手から愛されるか、といった問題について想いを巡らしています。
しかし、自分がどのように相手を愛するか、ということについては、重きをおいていない。

この2点をもとに、愛することは技術である。だから訓練や努力が必要だ。
しかし人々は愛を求めていながら、仕事や容姿などの関係ない部分に労力を費やしている。
という展開での思索が綴られた内容です。

愛は対象ではなく、技術の問題である。

主に恋愛の観点から。もっと理想的なタイミングで。もっと理想的な相手に。
そういう出会いを待つばかりで、自分の方は何も人間を愛する能力を向上させるような活動を行ったり、そういう事柄について深く考える時間も希薄になっている人は、自分を含んだ非常に多くの人に当てはまるのではないかということに気づくことができました。

時間を経るごとに高まっていく理想や条件などがあったとして、それを満たすような相手が現れても、なかなかうまくいかない。
といったことは日常茶飯事のようで、むしろ愛情とはそういうものなんだ。という考えに落ち着くことが大半ですが、ただ単に愛する技術が育っていないということが問題なのだという観点を知ることができて、世界が広がったように思います。

恋愛も経済的になっている。

愛を求めているのにも関わらず、愛する技術の修練を放棄して、社会的地位や仕事、容姿だとかいった、自分の外部にあるに過ぎないものを豊かにすることで忙しくなっている。
そうやって自分を恋愛市場におけるブランド品にしようと労を費やす傾向は、恋愛の相手を選ぶことが、なにか商品を見定めるようなものになっている。
という視点は、なんとなく感じていながらも、的確に言語化されているのを読むと、愛に関する問題は根深いけれど、自分の内面を豊かにしていくことが愛を獲得する過程には欠かせないということを、改めて実感することができました。

排他的な愛情は愛情ではない。

自分に恋人がいる場合、自分はその人以外のことを愛することはなく、また相手にも自分以外の人間に愛情を注ぐことを許さない。
という、普通「独占欲」だとかで呼ばれているこの態度は、特に現代でも広くみられる状態だと思います。

しかし著者が主張するように、愛情とは対象の問題ではなく技術の問題である。
という前提があると、そうした排他的な傾向は愛の強さの現れではなく、ただ単に自己中心性が2倍になっただけに過ぎない。
この考察は、今後自分が誰かとの関係を築いていく際に、とりわけ恋愛などにおいて留意しておくべき点であるという学びを得ることができました。

愛するということを読んでの感想やレビュー

自分が本書を手にとったきっかけとしては、表紙やタイトルが非常にシンプルなもので、「愛情とはなにか」という普遍的な問いを手にする前から投げかけられたことです。
そのとき衝動買いをすることはなかったですが、家に帰って2~3日経っても、本書に対する興味が絶えなかったので購入に至りました。
いざ読んでみると、惹かれた表紙とタイトルと同様、中身も非常にわかりやすく語り口でかつ的確に思想が主張されていて、名著だと思いました。

また、愛する技術を鍛えるためにどうすればよいか。という点について言及されすぎていないあたりも、自分で考えていく余白があって良いと思います。

愛するということがおすすめでない人

こんな人はおすすめしない

  • 今現在耽っている愛情に満足している人
  • 自分の愛の形を否定されたくない人
  • 他人が論じる愛を受け付けない人
  • 愛情に関心がない人
  • 愛するという活動に責任をあまり負いたくない人

私が本書を一回目読んだ感想は、自分のこれまでの価値観が否定されたということです。
これは悪いことではなく、むしろ肯定的な変化だったのですが、今自分のパートナーとギクシャクしていたり、自己犠牲的に愛情を注いでいる何かがある人の場合には、もう少し別のタイミングで手に取った方が良いかと思います。
また、愛情を軽視している人や、技術の訓練、愛するという責任などを重く枷のように感じる人にも、やはり本書から吸収できることも少ないと思うので、時期を改めると良いと思います。

愛するということをおすすめしたい人

こんな人におすすめ

  • 哲学に興味があり、比較的読みやすい書物を求めている人
  • 愛情について思い悩んでいる人
  • 自分は恋愛に縁がないと考えている人
  • 愛というテーマに関心がある人
  • 自分の人生と愛情の関係について考える機会が多い人

愛情という普遍的なテーマは、自分が生きている間はいつでも切り離せないものだと思います。
様々な経験を蓄積していく中で、自分の愛情の形や、愛に対する考え、それら経験や見聞きしたことの影響を強く受け、凝り固まったものになりがちです。
しかしいつまでも続くテーマだからこそ、愛に関する卓越した考察をじっくりと取り入れてみる機会を作るのは非常に有意義になると思います。

恋愛に限らず、自分に対する愛や、家族、友達、どのような形であれ、愛情深くあるにはどうすれば良いか。迷走している方におすすめしたいです。







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