ご紹介する本
総合
読みやすさ
学び
面白さ
この本から学べるポイント
- 1:1996年にこんな「大どんでん返し」が生み出されていたことへの驚き
- 2:著者による「但し書き」があるゆえの面白さ
- 3:古典的なミステリーならではの味わい深さ
香川県にお住いのペンネームひまわりさん56歳女性(職業:その他)から2022年9月頃に読まれた星降り山荘の殺人を読まれたレビューになります。
星降り山荘の殺人の内容
27歳の杉下和夫は、会社での失敗が原因となり、急遽、現在「スターウォッチャー」としてテレビ番組などに出演している美しい男性、星園詩朗のマネージャーをつとめることになります。二人は仕事のため一緒に豪雪地帯の山荘へ出向くこととなり、そこでUFO研究家や作家と秘書、女子大生、開発会社の社長とその部下らと一緒に過ごすこととなるのですが、なんと、そこで殺人事件が起こり、しかも天候の悪化のため交通が遮断されてしまいます。果たして犯人は誰なのか、極上の古典ミステリーです。
星降り山荘の殺人の著者について
著者:倉知淳
1993年に「競作 五十円玉二十枚の謎」という作品で若竹賞を受賞し、その後、「日曜の夜は出たくない」にて作家デビューしました。2001年には、第1回本格ミステリ大賞も受賞しています。
星降り山荘の殺人のYoutube
「星降り山荘の殺人」についてYouTube(ユーチューブ)で紹介している動画がないか調べてみました。
「ミステリー文学の本棚」チャンネルで紹介されているので良ければ合わせて見てみてください。
星降り山荘の殺人本の要約
この本から学べるポイント
- 1:1996年にこんな「大どんでん返し」が生み出されていたことへの驚き
- 2:著者による「但し書き」があるゆえの面白さ
- 3:古典的なミステリーならではの味わい深さ
雪に閉ざされた山荘にて次々と起こる殺人事件がテーマとなっています。山荘には、UFO研究家、スターウォッチャー、開発会社の社長とその部下、作家と秘書、女子大生など、いかにも怪しげな人々が集まっており、物語の語り手は「スターウォーチャー」の星園詩朗のマネージャー、27歳の杉下和夫です。場面ごとに「本編の探偵役が登場する」「探偵役が事件の犯人ではあり得ない」などという著者の但し書きが記されている点も特徴的な作品です。
1996年にこんな「大どんでん返し」が生み出されていたことへの驚き
ラストシーンは、文字通り、予想だにしない「大どんでん返し」が待っているわけですが、1996年代にこんな手法を思いついた作者に、脱帽です。しかも、多くの読者は、殺人犯はこの人だろうと予想しながら読み進めるわけですが、そこにいくつもの罠をしかけて、読者を惑わせる周到さが、すごいと感じました。どうしたら、こんな方法を思いつくのか、むしろ、技術的にさまざまなトリックが可能となる現代では思いつかない手法だとも思いました。
著者による「但し書き」があるゆえの面白さ
著者による「但し書き」があるのが、すごく面白いと思いました。読者の推理を後押ししたり、否定したり、とさまざまなコメントがあり、中には「なかなか殺人がおこらないけれども、もう少し我慢して読んで欲しい」というコメントがあって、思わずくすっと笑ってしまいました。この手法を思いついた著者はすごいと思います。ネタバレになるので詳しいことは言えませんが、この「但し書き」もしっかりと読んで、なおかつその意味をよく考えて読み進める必要があります。
古典的なミステリーならではの味わい深さ
古典的なミステリーであるがゆえに、人それぞれの感情の動きや、次々と閉鎖された場所でおこる殺人への恐怖感、パニック状態など、人々の心理状態が細かく描写されており、味わい深いものがあります。最近のミステリーはトリックやその奇抜さに重点がおかれ、人々の細かい心情がばっさりと切り捨てられているものが少なくありませんので、謎解きだけでなく、人々の心情の変化もじっくりと味わうことができるのは、逆に新鮮だと感じました。
星降り山荘の殺人を読んでの感想やレビュー
読み終わった後、とにかく「やられた」という思いが強かった一冊です。ミステリーを何冊も読んできて、犯人を暴くことには多少なりとも自信があったのですが、まんまとだまされてしまい、あらためて作者に意図に気づいた時、「最高の推理小説を読んだ」という気分に浸ることができました。ミステリーファンにとって最高に楽しめる一冊となっていますので、ぜひ長文にめげずに読んでみて欲しい作品です。この犯人を当てられる人は、本当にすごいと思いますよ。
【星降り山荘の殺人事件/倉知淳】
完全に犯人に騙されました
面白くてグングン引き込まれ、結末がわかって振り返ると、なるほどあれは巧妙なミスリードだったのかと思う箇所がいくつもあります。
先が読めない推理小説です。#読了 pic.twitter.com/Qs66nABFRt— アリスの読書垢 (@Alice_reading) May 16, 2022
「星降り山荘の殺人」 #読了
セオリーに乗った本格ミステリでずっと安心して読めると思いきや、名の知れた名作だけあってラスト付近では、まぁ驚かせてもらいました。 あらためて思う。いろんな意味で人は見かけによらないものだなと pic.twitter.com/jRb6c0fRuA— 読書好きのタケ (@kkAVKRCSe9Sv4Kl) June 4, 2021
星降り山荘の殺人がおすすめでない人
こんな人はおすすめしない
- 長編ミステリーが苦手な人
- なかなか事件が起こらない展開にイライラする人
- 犯人があてられなかったときの「悔しさ」が強い人
- なし
- なし
基本的にすべての人におすすめなのですが、著者が但し書きでことわっているようになかなか事件が起こらないため、長文の小説を読むのが苦手な人や、事件がすぐに起こらないとイライラしてしまうような人には、不向きな小説かもしれません。また、犯人を当てることが非常に困難なので、犯人を絶対に充ててやると意気込んでおり、犯人を当てられなかった悔しさがかなり強い人にもおすすめできないかもしれませんね。そこまで言われると逆に読んでみたいという方も多いかもしれませんが・・・・。
星降り山荘の殺人をおすすめしたい人
こんな人におすすめ
- 古典的なミステリーが好きな人
- 未だかつてない「大どんでん返し」のミステリーが読みたい人
- 犯人探しが大好きな人
- なし
- なし
ミステリーにおいて「犯人探しが大好きな人」「大どんでん返しが好きな人」にはぴったりの作品です。犯人が最後まで分からなかったという方が多いはずですので、ぜひ、だまされる悔しさをあじわってみてください。その特異であり得ない発想に、度肝を抜かれることでしょう。また、こてこての古典的ミステリーなので、古典的なミステリーファンの人にもおすすめの作品だと言えるでしょう。雪に閉ざされた差山荘、あやしげな登場人物、殺人事件、ミステリーサークルなどの設定にワクワクするタイプの方にはぜひ、手に取っていただきたい一冊です。