ご紹介する本
総合
読みやすさ
学び
面白さ
この本から学べるポイント
- 1:人口減少問題と地方創生問題を絡めて論じることがそもそもの誤りであること
- 2:地方から女性が脱出してしまう理由は、東京の魅力ではなく、地方側の軋轢にあること
- 3:未来に責任を持たない地域事業クソコンサルの存在が癌であること
広島県にお住いのペンネームまちづくり幻想壊したいマンさん37歳男性(職業:専業主婦(主夫)?)から2022年1月頃に読まれたまちづくり幻想を読まれたレビューになります。
まちづくり幻想のYouTube(ユーチューブ)
「まちづくり幻想」についてYouTube(ユーチューブ)で紹介している動画がないか調べてみました。
「上念司チャンネル ニュースの虎側」チャンネルで議論している動画があり非常に面白かったので是非一度ご覧ください。
まちづくり幻想の内容
"なぜ戦後一貫して国が莫大な財源を投入したにもかかわらず、地方は衰退し続けるのか。
地元をどうにかしたいと膨大な予算を獲得し事業に取り組んだ人々が大勢いるのに、思うような結果が出ないのはなぜなのか。
本書ではその原因を、地域にかかわる多くの人達があらゆる「まちづくり幻想」に囚われているから、と説明しています。
「まちづくり幻想」とは何なのか、それが生じる原因、背景やその構造をひとつひとつ丁寧に明らかにし、まちづくりにかかわる全ての人にエールを送る一冊となっています。"
まちづくり幻想の著者について
著者:木下斉
"高校時代に全国商店街の共同出資会社である商店街ネットワークを設立社長に就任し、地域活性化に繋がる各種事業開発、関連省庁・企業と連携した各種研究事業を立ち上げる。
2008年より熊本市を皮切りに地方都市中心部における地区経営プログラムの全国展開を開始し、多くの地域事業に携わる。著書多数。"
まちづくり幻想本の要約
この本から学べるポイント
- 1:人口減少問題と地方創生問題を絡めて論じることがそもそもの誤りであること
- 2:地方から女性が脱出してしまう理由は、東京の魅力ではなく、地方側の軋轢にあること
- 3:未来に責任を持たない地域事業クソコンサルの存在が癌であること
「まちづくり幻想」とは、皆が常識だと思い込んでいることが、実は現実とは異なり、それを信じ共有してしまうが故に、目指す姿とは反対に地域の衰退を加速させてしまう本質的な問題のことをさしています。失敗する地域再生事業の多くは、この幻想に囚われてしまっていて、やってはいけないことを初期段階で行なってしまっている、と著者は指摘します。加えて、一度スタートしてしまうともう後戻りができない、ということも「まちづくり幻想」の厄介な部分であるとしています。本書では、地域創生にかかわる全ての人の「まちづくり幻想」からの脱却、つまりは地域創生のおける思考の土台のつくり直しから始めることが必要であると主張しています。
人口減少問題と地方創生問題を絡めて論じることがそもそもの誤りであること
"著者は、人口減少を地方創生の出発点にしたことが誤り、と述べています。
そもそもの地方創生の出発点とは、本来の稼ぐインセンティブを復活させ、地方が独自かつ多様な発展をしていくための権限と財源の一体的な委譲を、実現するものであったはずが、それがいつの間にか回復不可能な人口減少という問題にすり替えられた、と説きます。
人口論で地域創生が語られると、地方の人口減は避けて通れない問題であり、人口論に支配された地方創生論はどこまで行っても無理が生じる、人口論に依存しない地域活性化策が必要としています。"
地方から女性が脱出してしまう理由は、東京の魅力ではなく、地方側の軋轢にあること
"著者は、若い女性が地元から逃げていく原因は、地元企業経営者の理解が足りず、地方起業にやりがい、魅力がないから、としています。
つまり、若い女性が東京へ向かう理由は、東京に魅力があるからではなく、地方社会が女性に閉鎖的で成長機会に乏しいからなのです。
例えば、地方起業の悪い例は、採用側が女性の希望に合わせて事業体制を変えるという発想がそもそもない、しかし一方で宮崎県日南市油津商店街の事例のように、女性の誘致に成功している事例が存在します。こうした事例が積み上がることで、地元採用の実績が大きく変わっていきます。"
未来に責任を持たない地域事業クソコンサルの存在が癌であること
"第2次安倍政権の地方創生政策予算、地方へ振り向けたお金の4割が東京へ還流した、という悪しき実績があります。
地域の経済構造を頭に入れないと、地元にお金が残らず、やればやるほど貧乏になっていきます。
これらの原因は、未来に責任を持たず、その場限りの補助金を目的とした、地域事業クソコンサルの存在があります。
外注になんでもやってもらって地元には何にも残らないという外部との付き合い方は不健全であり、地域側も意識を変える必要がある、と著者は説明しています。"
まちづくり幻想を読んでの感想やレビュー
地方創生、地域活性というニュースからイメージされる前向きなイメージこそ幻想で、その多くの裏では、本書で細かく説明されているような、現実とは異なる部分が多く存在するのであろう、ということを知ることができたことが一番の収穫です。また、人口減少と地方創生を切り分けて考える必要があることや、地域の経済構造を視野に入れ、地元にお金を還流することのできる事業選びなど、目から鱗の内容でした。本書を読まれて、地域事業にもう少し詳しくなりたい方は、木下斉さんの過去の著書も読むことをおすすめします。
この本、すっごく面白い!
『まちづくり幻想』木下斉著
先日、西武柳沢駅北口の再開発の話を商店街の集まりで耳にしたばかり。いいタイミングで読みました。
外部のコンサルや補助金をあてにした現在行われている地方創生をバッサリ切り捨て、地元の人間が本気で取り組む姿勢が大事だと述べてます。 pic.twitter.com/wN2ZjdqRss— 西武柳沢駅前ブックスミタカ【旧BOOKS三鷹(古本屋)】本の買取 (@BOOKS_MITAKA) December 3, 2022
地方創生は「人口減少」を出発点にした時点で終わっていた―
「人口さえ増加すれば地域が活性化する」という考え自体が幻想です―気持ち良くバッサリ切られました!#山梨県大月市
少人数の読書会から始めます「‐地域再生はなぜこれほど失敗するのか‐まちづくり幻想」木下斉(2021.3 SB新書) pic.twitter.com/xEAs84GgKs
— 藤本実 (@RDQ4KP5IFYkmwYP) May 8, 2021
木下斉氏「まちづくり幻想」SB新書、読了。
地方創生に絡む様々な「幻想」。成功例の真似ではなく、一つひとつ議論し、進むこと。
何をするもしないも、今何をしたかでまちの未来がきまる。
練馬区もコンサルや外注まかせにしないことが重要ですね…宮城県女川町は東日本大震災の復興で
「還暦以上は pic.twitter.com/gCQXsL1eJv— 高口ようこ(こうぐち)/練馬区議会議員 (@koguchiyoko) December 13, 2021
まちづくり幻想がおすすめでない人
こんな人はおすすめしない
- 現状に満足している地元民
- 補助金頼みで地元を回している地元民間企業
- 余計なことをしないでほしいと思っている人
- なし
- なし
"基本的には、すべての人におすすめですが、一方で現状で地域事業に携わっている(著者のいう)クソコンサル、またヤバい公務員、当事者は耳が痛い内容だと思います。
もちろん読みたくないでしょうし、認めたくない内容だと思います。
また30代の著者の意見は、50代の逃げ切り世代、また高度成長期に社会人として社会を支えた世代にとって、なかなか受け入れ難い意見かと思います。
変化を受け入れることができる層には響くかと思いますが、そうでない思考の人々にはなかなか届きにくい内容かと思います。"
まちづくり幻想をおすすめしたい人
こんな人におすすめ
- 今は地元を離れて都市部で生活している人
- 将来的に地元をどうにかしたい、と考えている人
- コロナ禍により地方移住を考え始めた人
- 地元の親が地域おこしでうまくいっていない人
- 地元の公務員の体制ややり方に不満がある人
"今は地元を離れて都市部で生活している地方出身の方、将来は地元に戻って何か地域に貢献できることをやりたいな、と漠然とそんな考えを持っている方、間違いなく本書を読んでみることおすすめします。
華やかに聞こえる地域復興ニュースや、地域再生の裏側で、実際には地域にお金は残らず、甘い汁を吸っている層がいる、ということを、事例交えて知ることができるため、未然に失敗を防ぐ確率が高まるでしょう。
何より、自分がどうにかしたい、と思いを馳せる地元に、こんな足を引っ張るような人間や組織が存在するのか、と憤りや呆れといった感情を覚えます。"