ご紹介する本
僕らはそれに抵抗できない: 「依存症ビジネス」のつくられかた
ジャンル: 人文・思想
著者: アダム・オルター
出版社: ダイヤモンド社; 第1版
発売日: 2019/7/10
本の長さ: 457ページ
総合
読みやすさ
学び
面白さ
この本から学べるポイント
- 1:依存症や中毒に陥る理由には、意志力の強弱はあまり関係がないということ
- 2:行動嗜癖には、{手がギリギリ届きそうな魅力的な目標}を始めとした、いくつかの要素があること
- 3:依存症の克服には、環境設計が鍵だということ
埼玉県にお住いのペンネーム読み書きちゃんさん19歳男性(職業:その他)から2021年12月頃に読まれた僕らはそれに抵抗できない: 「依存症ビジネス」のつくられかたを読まれたレビューになります。
僕らはそれに抵抗できない: 「依存症ビジネス」のつくられかたの内容
インターネットによって世に登場してきた、様々なSNSやゲームなどのサービスによって、依存症や中毒に陥る人の数も大きく増えました。
本書では、行動嗜癖と呼ばれる、何らかの悪癖を常習的に行ってしまう現象にはどのような要素やメカニズムがあるのかを、患者側とそれら製品やサービスを制作する側からの観点で考察されています。
またその影響や克服にはどういった手段や困難があるのかを、豊富なエピソード、研究や実験データを基に、紐解いていく内容が綴られています。
僕らはそれに抵抗できない: 「依存症ビジネス」のつくられかたの著者について
著者:アダム・オルター
行動経済学、マーケティング、判断と意思決定の心理学を専門とする、ニューヨーク大学スターン・スクール・オブ・ビジネスのマーケティング学科准教授
僕らはそれに抵抗できない: 「依存症ビジネス」のつくられかた本の要約
この本から学べるポイント
- 1:依存症や中毒に陥る理由には、意志力の強弱はあまり関係がないということ
- 2:行動嗜癖には、{手がギリギリ届きそうな魅力的な目標}を始めとした、いくつかの要素があること
- 3:依存症の克服には、環境設計が鍵だということ
日常生活でつい携帯に伸びてしまう手や、その結果一日の終わりに浪費してしまった時間の喪失に「なんとかしないと」と思っている方。
また、携帯に限らずあらゆる形態の依存症が、どのように発生するのかを学びたい方に向けた本です。
依存症を発する条件や誘因、それからなかなか離れることができない人物の実体験を見ながら、自分に当てはめて読んでいけます。
特に近年はほとんどの人間がスマホを所有しており、同時につい後悔するような浪費的な時間の使い方をしてしまうので、誰にとっても身近な問題を取り扱った本書の内容は、非常に興味深く記憶にも残りやすい読み物となっています。
依存症や中毒に陥る理由には、意志力の強弱はあまり関係がないということ
依存症や中毒に陥った患者と聞くと、その人間は意志力を欠いたような、精神的に弱い人間なのだろうという早とちりな判断をしたり、あるいは病気や障害のように一部の人の問題だと考えられがちです。
しかし、本書を読んでいくと、依存症は精神の強さや病気/障害の有無に関わらず、環境と条件さえ揃えば誰もが陥る可能性のあるものだということがわかります。
依存症とは、何らかの満たされない欲求があり、短期的にはそれを満たすが長期的には害となるような事物のバランスにあります。
心理的苦痛を取り除く、または低減してくれるものだと学習してしまったとき、人はそれに依存するのだと学び、自分はどんな心理的苦痛を抱えているのかという観点で向き合うことができました。
行動嗜癖には、{手がギリギリ届きそうな魅力的な目標}を始めとした、いくつかの要素があること
行動嗜癖には6つの主要因があります。依存症や中毒を発症させるものにはどれも、6つのうち1つは要因として入っています。
それら6つの要因が、それぞれに対応する個人例や実験の紹介と身近な例を織り込みながら解説されています。
基本的にはインターネットに焦点を当てて読んでいくことになりますが、日常生活における様々な事物に対して当てはめてみることができるので、意外と自分がこれに依存しているな。という発見や気付きが得られます。
依存症の克服には、環境設計が鍵だということ
依存症は、ある物質や行動が、心理的苦痛を和らげたり低減してくれたことを学習したとき、繰り返されて強化されることで陥るものです。
これはつまり、依存症に陥るような心理的苦痛等が生じる環境から遠い環境に離れることができれば、克服できる可能性を意味しています。
たとえば本書では、物理的な近さによって物や者への親近感が影響を受けることを解説しており、その情報から、普段手の届くところに置いている携帯を別室や取り出しにくい棚の奥などに置いてみたところ、いくらか改善に繋がりました。
僕らはそれに抵抗できない: 「依存症ビジネス」のつくられかたを読んでの感想やレビュー
自分自身、インターネットの使用によって意図しない時間を浪費してしまうことが日常的にあり、そのことに不快感がありました。
本書でも説明されているように、何かに依存したり中毒状態にある人は、実際にはそれを好んでおらず、嫌悪を抱いていたりする。
なのにやめられないから依存症なわけであります。
つまり、自分でも何故時間を浪費してしまうのか、何故手にとってしまうのかということがわからずにいましたが、その鬱憤を解決するのに非常に役立ちました。
僕らはそれに抵抗できない: 「依存症ビジネス」のつくられかたがおすすめでない人
こんな人はおすすめしない
- 何かに役立てるわけでなく、ただ読むだけで満足したい人
- 重要であっても、本質的には似たようなことが繰り返し述べられることが苦手な人
- 他人のやることに対してあれこれ言いたくなる人
- なし
- なし
本書に限らず、心理学系の内容を扱った本や知識は、なぜかすぐ他人にも教えたくなります。
しかし、特に日常生活に支障をきたさないような活動に口を挟まれたりするにも抵抗が生じやすいなか、依存症や中毒に関して「あなたの依存症はこういう原理でなってるんだよ」「こうすれば克服に有効だよ」と、簡単に口を開きすぎると、自分は知識をひけらかして満足感があっても、当人にはそれがストレスとなり、かえって悪化してしまう可能性もあるので、その節がある人にはおすすめしないです。
僕らはそれに抵抗できない: 「依存症ビジネス」のつくられかたをおすすめしたい人
こんな人におすすめ
- インターネット使用による時間浪費を克服したいと感じている方
- 何らかの物質や行動に依存していて、しかし好んでやっているわけではないという方
- 研究や実験に基づいた文章に興味があるが、どれを読めばいいかわからずにいる方
- なし
- なし
本書は心理学の知識や、研究/実験のデータに基づいて各項目ごとに整理されているため、依存症に関して勉強することにも役立つだけでなく、それを実際に自分や身近な人の日常に照らし合わせて、より良く生きていくのにも役立てることができます。
そのため、純粋に心理学などを学ぶことに興味がある人に限らず、自分や身近な人が依存症や中毒による弊害に蝕まれている。という人にも読みやすく、十二分に一読の価値ある内容となっています。
また提供されているデータや知識は、自分も試しにやってみたい場合の壁が低いものばかりなので、硬くならず自分に合った方法を見つけやすいと思います。